スクウェア・エニックス(本社:東京都新宿区)は、モバイルゲームのバックエンドシステムを仮想マシンベースからKubernetes/コンテナベースに移行した。トラフィック急増時のスケーラビリティと安定性、ユーザー体験の向上を図っている。コンテナ実行基盤にはGoogle Kubernetes Engine(GKE)を採用した。グーグル・クラウド・ジャパンが2025年4月18日に発表した。
ビジネスの拡大で仮想マシン環境のスケーラビリティに限界
デジタルゲームや出版、アミューズメントなどの事業を営む総合エンターテインメント企業のスクウェア・エニックス。旗艦のデジタルゲームでは、「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」「キングダム ハーツ」などのタイトルが広く知られている。
同社はモバイルゲームのバックエンドシステムを、IaaS上の数百台規模の仮想マシンで構築。システム上でユーザー情報の管理やゲーム内課金など、さまざまな処理を一括して行ってきた。このシステム環境の下、開発や運用の効率化、コスト削減、良質なゲーム体験の提供などを追求してきたという。
しかし、ゲームタイトルやユーザーが増加するに従い、このシステムにスケーラビリティの課題が浮上する。トラフィックが急増した際、サーバー側には最大で数万RPS(リクエスト/秒)Request Per Second)のアクセスに対応しながら、数十ms(ミリ秒)オーダーの応答速度の確保も求められる。
「旧来のシステムではスケーラビリティの確保に限界が生じており、運用の柔軟性向上も急務になっていった」とカスタマーエクスペリエンスデザインセンター オンラインビジネス推進ディビジョン プラットフォーム開発グループの佐藤雅宏氏は当時の状況を説明する。
「新規ゲームのリリースやゲーム内イベントなどがきっかけでトラフィックが急増した際、処理能力の拡張に時間がかかっていた。システム更新などのために行う定期的な計画停止においても、ゲームがプレイできない時間が生まれていた。データベースに障害が発生した際は、復旧に半日以上かかることもあった」(同氏)。
Kubernetes/コンテナ環境への移行で性能スケールが容易に
スクウェア・エニックスは、こうした課題を解決するため、バックエンドシステムのアーキテクチャ自体を刷新し、仮想マシンベースからコンテナベースに移行するプロジェクトに取り組んだ。
プロジェクトでは、Kubernetesを導入する方針が当初から定められていた。Kubernetesなら、Podやノードの自動スケーリング機能などのマネージドサービスを活用して、ワークロードに合わせてリソースを柔軟に増減させられるからである。グーグル・クラウド・ジャパンの支援の下、コンテナ運用基盤に、「Google Kubernetes Engine(GKE)」を採用。約3年間の作業を経て、2024年9月に移行が完了した(図1)。

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同グループの伊賀一貴氏は、GKEのその他の優位性として、細かなカスタマイズができる/エンジニアの知見を蓄積しやすい/コストパフォーマンスがよいといった点を挙げている。
移行の効果として、佐藤氏は、当初の目的とした水平スケールが容易になったメリットを強調する。「旧システムでは、APIを増強するだけでも数時間以上の作業が必要だったが、新システムでは数十秒で完了する。急激な負荷上昇や負荷試験時のスケール調整に対しても即座に対応できるようになった」(佐藤氏)。
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