[市場動向]

ニチレイのシステム障害に見る、サプライチェーン強化に向けた「HITL」の重要性

2026年9月10日(木)佃 均(ITジャーナリスト)

2026年7月に発生したニチレイのサイバー攻撃被害は、広範なサプライチェーンへの影響と、迅速な情報公開の重要性を示した。近年増加するサプライチェーン攻撃に対し、国内では「SCS評価制度」の整備が進んでいる。AIや自動化が進む時代だからこそ、単なるツールの導入に終わらず、現場に人間の判断を組み込む「HITL」の思想や、現場主体のセキュリティ体制が不可欠となる。本稿では、過去の事例や最新の制度を踏まえ、システム停止時の現場対応から復旧後までを見据えた事業継続計画(BCP)のあり方を考察する。

 ニチレイのシステム障害が起きたのは2026年7月13日、実質的に終結したのは8月14日だった。同社によると、システム障害の原因は「サイバー攻撃」で、それ以上の詳細は明らかになっていない。一般的には、ランサムウェアに感染した可能性が高いと考えていいだろう。これにより、ニチレイロジグループ各社の冷蔵倉庫入出庫業務とニチレイフーズの冷凍食品出荷業務が停止した。

 被害はニチレイグループにとどまらなかった。日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)やくら寿司といった外食チェーン、イオン、ヨークベニマル、惣菜店「RF1」を展開するフロジャポンなど、ニチレイから商品供給を受ける企業にも影響が及んだ。品切れやメニュー制限、一部店舗の営業時間短縮など、消費者の目に見えるところまで影響が広がった。

社会的役割を担う企業の対応

 注目したいのは、サイバー攻撃によるシステム障害に対して、同社が的確かつ迅速に情報を公開したことだ。ほぼ2日おきにニュースリリースの形で状況を明らかにしたことには、社会的役割を担っている企業の不祥事・アクシデントへの対応として、学ぶべきところが少なくない。具体的には次のようだった(表1)。

表1:ニチレイのシステム障害に関する情報公開(同社のニュースリリースを元に筆者作成)
公表日 報告内容
7月13日 第1報 システム障害の発生を公表
社内システムを外部から隔離・遮断する初期対応を実施
7月15日 第2報 障害の原因が外部からのサイバー攻撃によるものであると公表
ニチレイロジグループの冷蔵倉庫における入出庫業務およびニチレイフーズの冷凍食品出荷業務が停止した旨を発表
7月17日 第3報 冷凍・冷蔵物流業務および出荷業務の順次再開を開始したと発表
7月下旬の全拠点における通常稼働・全面復旧を目指す方針を提示
7月22日 第4報 主要な受発注・物流システムが順次復旧・再開している進捗を報告
7月24日 第5報 物流および製造出荷体制の大部分が通常稼働へ復帰したことを報告
システム障害による業務影響の終息状況を提示
8月14日 第6報 サーバーの一部にグループ会社等の従業員情報が保管されていたこと
一部従業員情報(※)の漏えいのおそれがあることを発表(不正利用は未確認)
※氏名、生年月日、メールアドレス、従業員番号など

●Next:レジリエントなサプライチェーンを構築するために

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