製品、サービスのコモディティ化に対するメガベンダーの危機感は強い。 常に新たな成長領域を開拓しなければ、後続ベンダーとの過酷な競争に飲み込まれてしまうからだ。 各社とも、“次世代”の企業ITのビジョンを描き、ポートフォリオの再編を急ぐ。
コンシューマ発のテクノロジーを企業ITに取り込む
ここ数年間、トレンドとなったテクノロジーは、コンシューマ寄りの領域から生まれたものも少なくない。例えば、AmazonやGoogleなどの事業者が、自社のインフラを効率的に運用するために生み出したクラウド。iPhoneやiPadの登場で一挙に市場が拡大したスマートデバイス。ビッグデータ活用の端緒を開いた分散処理基盤Hadoopは、Googleが自社の検索サービスを支えるために開発した技術が原型と言われる。「これまでの企業ITの技術系譜にない、異種の技術が買収などを通して、企業ITの世界に入り込んできている」(ガートナーの堀内秀明マネージング バイスプレジデント)。
案件数という観点では、“ソーシャル”に関連する企業買収が目立つ(表)。特に、同分野に傾注するのが、セールスフォースである。フェイスブックに酷似したユーザーインタフェースを持つ、企業向けSNS「Chatter」を筆頭に、ソーシャル技術を取り入れたサービスを展開。そのために、関連技術を持つベンダーを急速に買い揃えている。
また、マイクロソフトは、企業向けSNSのYammerを買収。SaaS版オフィススイートの「Office 365」や情報共有ソフト「Microsoft SharePoint」、顧客関係管理ソフトの「Microsoft Dynamics CRM」などの機能強化を図ると発表した。
ITベンダーがソーシャルに注目する理由。それは、コンシューマ市場で磨き上げられた、ユーザーを惹き付ける技術である。「CRMやナレッジマネジメントといったシステムが真価を発揮するためには、質の高い情報のインプットが欠かせない。数億人規模のユーザーが1日に何度もアクセスし、自発的に情報を投稿するソーシャルメディア。そのノウハウを活用したいと考えるのは必然だろう」(ガートナーの志賀嘉津士リサーチディレクター)。
以下では、各社の買収案件を一覧し、それぞれの戦略を整理する。
企業名 | 買収した企業 | 概要 | 時期 |
---|---|---|---|
Collective Intellect | Oracle | ソーシャルメディアの分析 | 2010年11月 |
Radian6 | Salesforce.com | ソーシャルメディアの分析 | 2011年03月 |
Skype | Microsoft | IP電話 | 2011年05月 |
Rypple | Salesforce.com | ソーシャル技術を使った人材パフォーマンス管理 | 2011年12月 |
Vitrue | Oracle | ソーシャルメディアを使ったマーケティング | 2012年05月 |
Yammer | Microsoft | 企業内ソーシャルメディア | 2012年06月 |
Buddy Media | Salesforce.com | ソーシャルメディアを使ったマーケティング | 2012年06月 |
Involver | Oracle | ソーシャルアプリの開発プラットフォーム | 2012年07月 |
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