[システム障害対策をUpdateせよ!AIOpsが導くインシデント管理の進化形]

減りゆくIT人材、インシデント対応は「自動化とAI」でどう変わるか:第2回

2025年7月1日(火)草間 一人(PagerDuty Product Evangelist)

サイバー攻撃/脅威が先鋭化を続け、セキュリティインシデント対応の負荷増大や、自社そして顧客・パートナーにも及ぶ被害損失など、今日の企業・組織は、経営やビジネスに甚大な影響を及ぼすリスクに囲まれている。PagerDutyが2024年8月に実施した調査によれば、国内企業におけるインシデント対応の年間累積コストは、グローバル平均の28億円の約2倍となる52億円に上り、国内企業の疲弊と損失が顕著だ。本連載では、過去の事案を分析しつつ、これからのシステム障害対策はどうあるべきか、AIOpsを取り入れて組織のインシデント管理を進化させる方法を解説する。第2回では、インシデント管理における「自動化とAI」にフォーカスして、これらがシステム運用現場の厳しい状況をどう改善していけるのかを考察する。

生産人口が減少を続け、IT人材確保がより困難に

 日本企業が直面している最大の課題の1つに、人的リソースの限界がある。特に、日本特有の課題は生産人口の減少だ。総務省の統計によれば、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年の8716万人をピークに減少を続け、2023年には概算で7400万人。この傾向は今後も続くと見られる。そんな中で、ITに携わる人材の確保も今後さらに厳しくなっていくことが懸念されている。

 加えて、クラウド、コンテナ、サーバーレスアーキテクチャなど、ITインフラ周りで新たな技術が登場するたびに、IT人材のスキルギャップが顕在化している。いずれも使いこなすには専門知識と経験が必要だが、人材獲得競争が熾烈になる中で、すべての企業が専門人材を確保できるわけではもちろんない。

 このような状況下、限られた人材でいかにして効率よくシステム運用を行うか。昨今、とみに注目度が増しているのが、インシデント対応プロセスの自動化と「AIOps」だ。

インシデント被害コストはグローバル平均の約2倍

 まず、現状のインシデント対応がもたらす損失について考えてみよう。PagerDutyの調査では、重大なインシデントによるシステム障害から復旧するまでの平均修復時間(MTTR)において日本企業は6時間12分。グローバル平均の2時間55分と比較して、実に約2倍も要している。さらに、システムダウンタイムによる損失は1分あたり約74万円、重大インシデント発生時の累計コストは年間52億円にも上る(図1)。

図1:重要インシデント数と被害コスト(出典:PagerDuty)
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 MTTRが長期化する原因として、いくつかの日本企業特有の問題が考えられる。まず、組織の縦割り構造によるコミュニケーションの遅延だ。インシデント発生時に、開発、運用、ネットワークなど複数の部門・部署をまたいだ対応が必要になると、責任範囲の線引きや情報共有に時間を費やしてしまう。また、システム開発・運用のアウトソーシング(あるいは丸投げ)によるベンダーへの強い依存は、緊急時の対応の遅れや、システム全体を把握しうる社内人材の不足などにつながる。

 これらの問題がもたらすのは、インシデント対応の遅延だけではない。販売機会の喪失、顧客満足度の低下、ブランドイメージの毀損など、長期的なビジネスへの悪影響も招いてしまうというのは、以前からよく言われてきたことだ。

●Next:インシデント対応の自動化とAIがもたらす効果、AIエージェントによる“インシデント管理革命”

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