[ザ・プロジェクト]

「こんな旅がしたい!」をチャットの対話で提案、Booking.comが挑むAI駆動の旅行計画

生成AIは旅行者の“不安”や“制約”をどう解消するか

2025年8月5日(火)神 幸葉(IT Leaders編集部)

世界最大級のOTA(オンライン旅行会社)であるBooking.com(ブッキングドットコム)が、旅行者の多様なニーズに応えるべく、AI活用を加速させている。同社独自のデータを基に、旅行に関する一般的な質問から旅程の作成までをサポートする対話型の生成AI機能「AI Trip Planner」をはじめ、さまざまなサービス/機能でAIを駆使している。AIがもたらす利便性や顧客体験と、OTAとしての信頼性を両立させるための仕組みなど、同社の戦略とアクションを、プロダクト担当シニアディレクターのアドリアン・エンギスト氏への取材内容を基にお伝えする。

早期からWeb旅行予約のニーズをとらえて世界最大級のOTAに

 1996年、オランダ・アムステルダムで小さなスタートアップ企業として創業したBooking.com(ブッキングドットコム、画面1)。当時、オンラインでの旅行・宿泊予約が普及し始めた中で始動した同社は、世界中のホテル、旅館、アパートメント、民泊、バケーションレンタルなど多種多様な宿泊施設のオンライン予約サービスを中核に、宿泊施設から予約成立に対する手数料を受け取るビジネスモデルを確立。インターネットのビジネス活用が本格化した“ドットコムブーム”の潮流にも乗って成長を遂げた。

画面1:Booking.comのトップページ
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 現在は世界220以上の国と地域でサービスを展開し、40以上の言語に対応。世界最大級のOTA(Online Travel Agent:オンライン旅行会社)として知られている。近年は、航空券やレンタカー、現地でのアクティビティ予約など、旅程全体の予約をシームレスに行えるサービスに力を注いでいる。

 親会社の米Bookingホールディングスは、アジアに強いAgoda、米国を中心とするPriceline、レストラン予約に特化したOpenTable、旅行情報の検索・比較ができるKAYAKなど、旅行に関わるサービス事業者を多数傘下に持ち、グループ全体で世界中の旅行者をカバーしている。

インスピレーションに導かれて計画が決まる─変化する旅へのニーズ

 一般に、旅行のホテルを予約しようとなったとき、あらかじめ「どこへ、いつ、どれくらいの期間」を決めてからOTAのサイトを訪れる利用者が多いと思われる。しかし、Booking.com プロダクト担当シニアディレクターのアドリアン・エンギスト(Adrienne Enggist)氏(写真1)によると、近年は、こういった王道の旅行計画の立て方に変化が見られるという。

 「旅行について考える時、これまでは特定の目的地や期間が計画の前提にありました。しかし、旅行計画というのは非線形なものです。現在はユーザーが味わいたいと思っている経験やインスピレーションを与えてくれる雰囲気を前提に具体的な旅行計画を考える流れが生まれ始めています」

写真1:オランダBooking.com プロダクト担当シニアディレクターのアドリアン・エンギスト氏

 Booking.comは、こういった旅行者のニーズの変化をとらえて、利便性を高めながら旅行計画を一人ひとりの感性に沿ったかたちで充実させることに力を注いでいる。その手段に先進テクノロジーの積極的な活用があり、今日進化が著しいAIについては10年以上前から活用を試みてきたという。

 同社では、宿泊施設や目的地の説明文や写真、顧客が投稿したレビューといった膨大な非構造化データを20年間にわたって蓄積している。加えて、サイトの利用履歴を基にした顧客の利用実態のデータも有する。これらのビッグデータをナレッジベースに、生成AI/大規模言語モデル(LLM)を活用して、利便性や顧客体験、そして同社のビジネスに資するインサイトを得る──これが最新のAI活用のアプローチとなっている。エンギスト氏は、「今のAIアプローチは、目的地と旅行者を柔軟な旅行計画で橋渡しする完璧な方法だと考えています」と自信をのぞかせる。

●Next:「AI Trip Planner」をはじめとするAI機能群で変化する旅行計画

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