[ザ・プロジェクト]
オリンパスが挑む、医療機器ソフトウェア開発の”産業革命”
2025年10月20日(月)森 英信(アンジー 代表取締役)
医療機器業界のソフトウェア開発には、各国の法規制への対応、5~10年という長期のソフトウェアライフサイクルなど、さまざまな課題・制約がある。オリンパスは、「グローバル・メドテックカンパニー」への変革を進める中、ソフトウェア開発の複雑化やコスト増大に直面していた。そこで、同社のソフトウェア開発インフラチームは、開発の分業・自動化・標準化を図るべく、「プラットフォームエンジニアリング」のアプローチに着目。その基盤に「GitLab」を採用し、種々の課題・制約を乗り越えながら、経営に資する開発環境の整備を進めている。困難な変革を主導したキーパーソンに背景から成果までプロジェクトの軌跡を語ってもらった。
グローバル・メドテックカンパニーを追求する医療機器メーカー
東京都八王子市に本社を置き、消化器内視鏡や治療機器などの医療機器を開発・製造するオリンパス。1919(大正8)年に創立、顕微鏡の開発から始まった同社の事業は、1936年にカメラ事業へ進出、 1950年には世界初の実用的な胃カメラを開発。高品質な光学技術を軸に医療分野では内視鏡、科学分野では顕微鏡、映像分野ではコンパクトカメラなどで業容を拡大していった。
「オリンパスと言えば名門カメラメーカー」。そんなイメージを持たれやすいが、同社はカメラを含む映像事業を2021年1月に売却し、祖業の顕微鏡事業も2023年4月に手離している。内視鏡分野で世界トップシェアを持つ現在の同社は、国内外のグループ会社と共にグローバルに事業を展開している。
オリンパス 技術戦略機能 ソフトウェア開発インフラストラクチャ シニアディレクターの柳田修太氏(写真1)は、「グローバル・メドテック(MedTech)カンパニーを掲げて、トランスフォーメーションに取り組み続けています」と話す(関連記事:新グローバル本社を起点に取り組む、組織と働き方のトランスフォーメーション─オリンパス)。
写真1:オリンパス 技術戦略機能 ソフトウェア開発インフラストラクチャ シニアディレクターの柳田修太氏現在のオリンパスの事業は、消化器内視鏡ソリューション事業とサージカルインターベンション事業に分かれている(図1、2)。柳田氏が携わるソフトウェア開発インフラストラクチャ(以下、インフラチーム)は、これらの機器に組み込まれるソフトウェアの基盤領域を担う。
図1:消化器内視鏡ソリューション事業の事業領域(出典:オリンパス)拡大画像表示
図2:サージカルインターベンション事業の事業領域(出典:オリンパス)拡大画像表示
柳田氏は、以前のソフトウェア開発体制について産業革命になぞらえてこう説明する。「これまではソフトウェアの規模が小さかったので、少人数で一人ひとりの担当範囲が広いうえ、ツールも少なく手作業が中心でした。まるで産業革命以前の家内制手工業のように、ソフトウェア開発を1人で全工程を担当する時期が長く続きました」。
ソフトウェア開発の技術・手法の発展から、そんな状況に変化が起こる。「産業革命の工場制機械工業のように、自動化された大規模な開発環境が欠かせなくなりました」と柳田氏。ソフトウェア規模が指数関数的に大きくなり、関わる人数も増加した結果、担当範囲の分業が欠かせなくなり、非常に狭い範囲での専任化が進んでいるという。
一方で、医療機器業界固有の事情が、ソフトウェア開発に大きな影響を及ぼしている。医療機器は国・地域ごとに多数の法規制があり、それらが年々増加し、かつ厳格化している。しかしながら、機器に組み込むソフトウェアの開発サイクルは5~10年と長く、開発開始時の古い技術や開発インフラを継続して用い続けるケースも多い。このことが法規制への対応を困難にしていく。
さらに近年は、グローバル・メドテックカンパニーを追求する過程で、国内外の拠点との共同開発の増加、アジャイル開発やAIによる開発支援、あるいはサイバー攻撃への対策など新たなテクノロジートピックがハイペースで増えていることも、ソフトウェア開発の複雑化・難度上昇に拍車をかけている(図3)。
「さまざまな状況から、今後、ソフトウェア開発費が爆発的に膨れ上がってしまうことを覚悟していました」と、柳田氏はインフラチームが抱えた当時の危機感を振り返る。
図3:ソフトウェア開発の特徴と外部環境の変化の影響(出典:オリンパス)拡大画像表示
●Next:だれでも作業できるソフトウェア開発環境を目指して─「GitLab」環境の構築と立ちはだかる壁
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