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「データ活用宣言」を起点に広がるデータ文化─三菱電機の全社データマネジメント実践

DXの加速に、ガードレールとしてのデータガバナンス

2025年10月1日(水)愛甲 峻(IT Leaders編集部)

三菱電機(本社:東京都千代田区)が、「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を掲げ、データ活用を軸としたデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させている。その一環として進めているのが、全社的なデータマネジメントに向けた仕組みづくりだ。2025年5月には「データ活用宣言」を社内外に発信し、データという経営資産の価値最大化を目指す姿勢を明確にしている。DX推進組織のキーパーソンに、取り組みの経緯や狙い、今後の展望を聞いた。

データの「循環」による事業変革を目指す

 1921(大正10)年創業の長い歴史を持つ大手総合電機メーカーの三菱電機。家電から重電、半導体、ビル設備、ファクトリーオートメーション(FA)、防衛・宇宙まで広範な事業を展開している。グループ会社は約200社、従業員数は連結で14万9千人に上る。

 2022年より「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を掲げ、グループ全社でのデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。多種・膨大なデータを集積・管理・分析して、設備機器などのシステム・サービスの開発・改善や、社会課題の解決に資する新規サービスの創出、顧客を含む幅広いステークホルダーへの価値還元などに活用する構想だ。

 この大規模な取り組みを支えるのが、2024年5月に発表したデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」である。事業領域を横断するデータ活用の促進を目的とし、データ分析基盤やWeb API連携基盤などの「技術基盤」に加え、「人財基盤」「共創基盤」「プロジェクト推進基盤」の4つで構成される。とりわけデータ分析基盤には全社のデータが格納されるほか、全社共通の分析ツールなどが揃い、技術基盤の要となっている(図12)。

図1:デジタル基盤「Serendie(セレンディ)」の全体像(出典:三菱電機)
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図2:Serendieのデータ分析基盤(出典:三菱電機)
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 Serendieを活用した具体例の1つに、熱関連トータルソリューションがある。従来のサービスでは、ビルや製造設備を持つ顧客向けに、電気設備や冷熱機器などのコンポーネントを組み合わせて提供してきた。この領域にSerendieが加わり、データに基づくエネルギー需要の予測値からシステム全体の運用最適化を図ることで、脱炭素化への貢献などの付加価値を創出することが可能になった(図3)。

図3:Serendieを活用した熱関連ソリューションの変革(出典:三菱電機)
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 そして現在、三菱電機は全社的なデータマネジメントに向けた制度や体制の整備に動いている。以前より同社は、デジタルやデータを生かした新たなサービス創出を目指す「事業DX」、業務改善やデータ駆動型経営を推進する「業務DX」、製品開発や製造の効率化に向けた「ものづくりDX」の3領域に取り組んできたが、それらは基本、領域ごとの主導で進められてきた。

 一方、データマネジメントは全社の取り組みという認識に立っている。同社 DXイノベーションセンター 戦略企画部 次長の浜田理恵氏(写真1)は、「各領域が異なる課題認識に基づいて取り組みを進めてきましたが、データマネジメントは全社で共通化すべきであるとの考えから検討を始めました」と経緯を説明する。

 一連の取り組みを主導するDXイノベーションセンターは、各事業ドメインのDX推進チームをはじめ、基盤開発のエンジニアやデータサイエンティスト、顧客とのスクラム活動を担うメンバーなど、クロスファンクショナルな人材を擁する。2023年4月に30名程度の規模で発足し、3年目となった現在は兼務者を合わせて100名近くまで拡大しているという。

写真1:三菱電機 DXイノベーションセンター 戦略企画部 次長の浜田理恵氏

●Next:「データ活用宣言」を社内外に公開した狙いは?

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