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オンプレミスのレガシーデータ基盤をクラウド移行、3年間で270%のROIを算出─塩野義製薬

「バリューエンジニアリング」の手法で、施策の手応えを可視化

2025年12月25日(木)愛甲 峻(IT Leaders編集部)

塩野義製薬(本社:大阪市中央区)は、データ活用による企業変革を加速するべく、長年運用してきたオンプレミスのデータ分析基盤をクラウドへ移行した。さらに、その成果を「バリューエンジニアリング」の手法で評価し、投資対効果の可視化や合意形成に役立てている。Snowflakeのプライベートイベント「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO 2025」(2025年9月12日開催)に、塩野義製薬 DX推進本部 データサイエンス部の黒島航氏が登壇し、クラウド移行の背景や、定量的に捉えた移行の成果について発表した。

 1878(明治11)年創業の老舗製薬会社である塩野義製薬。創薬研究開発型企業として、抗HIV薬などの感染症、代謝性疾患、疼痛、QOL(生活の質)関連などの医薬領域に強みを持つ。「パイロンPL」や「セデス」などのよく知られたシオノギのブランドをはじめ、さまざまな医薬品を国内外に展開している。2025年3月期の年間売上は4383億円で、連結で約5000名の従業員を擁する。

 2020年6月に策定された中期経営計画において、シオノギは医薬品のみを提供する製薬企業から、幅広いサービスで患者や社会の課題を解決する「ヘルスケアプロバイダー」への変革を掲げた。創薬で培ってきた強みを生かし、「ヘルスケア・アズ・ア・サービス(HaaS)」をキーワードに、異なる産業を含むパートナーとの共創に取り組んでいる(図1)。

図1:塩野義製薬が目指す方向性(出典:塩野義製薬 中期経営計画)
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 シオノギでは、変革へと進む原動力の1つに「技術革新やデータ活用の促進」を位置づけており、社内外に存在するさまざまなヘルスケアデータを、創薬などの事業に役立てている。例えば、社外から購入するレセプトデータと感染者数に関するオープンデータとの組み合わせで感染症の流行予測をしたり、社内の臨床試験データとの組み合わせで重症化因子の探索をしたりといった具合だ。

 一方、データ分析基盤は長年の運用に起因する技術的課題を抱えていた。同社は2018年度にオンプレミスで、Apache Hadoop/Hiveをベースとする基盤を構築。ニーズの拡大に合わせて、Apache Sparkの導入やクラスターの増強、サーバーのリプレースなどの技術的改善を重ねてきた。

 直面していた課題について、同社 DX推進本部 データサイエンス部の黒島航氏(写真1)は当時を次のように振り返った。

 「解析に用いるマシンのCPU性能に限界があり、演算処理に時間を要するケースが増えていた。また、共有リソースのため1つの重い処理が他の処理に影響し、順番待ちの発生が業務効率を低下させていた」(黒島氏)

写真1:塩野義製薬 DX推進本部 データサイエンス部の黒島航氏

 運用面でも課題があった。ストレージの運用では容量の制約から、大規模データの取り扱い時に容量調整やデータの削除といった作業を要した。社外とのデータ連携では、オンプレミス環境ゆえ、つどバッチ処理でのロードが必要で、柔軟な連携は難しかった。さらに基盤運用では、データウェアハウス(DWH)のアップデート、障害対応、メンテナンスなどが継続的な作業負荷となっていたという。

 そこで同社は2022年度に、ビッグデータ基盤をクラウド環境に移行することを決断。クラウド型DWHの「Snowflake」を採用し、移行期間を経て2024年度に本番運用を開始した。

●Next:クラウドリフトがもたらす投資対効果を定量化

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塩野義製薬 / ビッグデータ / アナリティクス / クラウドDWH / Snowflake / 製薬 / バリューエンジニアリング

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