[インタビュー]

コードクリサリス創業者がたどり着いた、ソフトウェア開発を成功に導く“3つの役割”

「日本を再びソフトウェアリーダーに」─内製力を磨いて未来を拓く

2026年2月9日(月)河原 潤(IT Leaders編集部)

ITエンジニアを育てても十分な成果が出ない、優秀な人材を集めてもチームが機能しない。日本企業のソフトウェア開発が抱える本質的な問題は何か──シリコンバレー流のブートキャンプを日本に持ち込んだコードクリサリス(Code Chrysalis)共同創業者/CEOのカニ・ムニダサ氏はその答えを明確に示す。「プロダクトマネジャー、プロダクトデザイナー、ソフトウェアエンジニア。この3つの役割が揃わなければ勝てない」。現在の同社は個人向けの研修プログラムを終了して企業向けに完全移行。3つの役割を3カ月で同時育成するという、国内では類を見ない試みを始めた。システム/アプリケーションの内製開発力を高めたい読者に向けて、カニ氏に変革の道筋を聞いた。

 2019年春に本誌が取材した頃のコードクリサリスは、個人のスキルアップに特化したソフトウェアエンジニア養成スクールとして注目を集めていた(関連記事3カ月で100万円超の授業料でも満員の理由は?─高度IT人材育成ブートキャンプ「Code Chrysalis」

 それから7年が経過し、現在の同社は、これまで人気を博してきた個人向けプログラムを終了して、企業・組織のための新プログラムに軸足を移して事業を展開している。2026年1月13日に開講した新たなスクールでは、「ソフトウェアエンジニア」だけでなく「プロダクトマネジャー」「プロダクトデザイナー」という3つの役割を同時に、しかも3カ月で育成するという、国内では類を見ない試みとなっている。

写真1:コードクリサリス共同創業者兼CEOのカニ・ムニダサ氏

 共同創業者兼CEOのカニ・ムニダサ(Kani Munidasa)氏(写真1)は、前職で携わったPivotal Labsでエクストリームプログラミング(XP)の実践を牽引してきた人物だ。「日本を再びソフトウェアリーダーにしたい」という思いで2017年に同社を創業したカニ氏に、なぜ今、このタイミングで事業をB2Bに転換したのか。そして、日本企業がソフトウェア開発やAI/デジタル活用で成功を収めるために必要なもの(欠けているものは何か)。核心に迫ってみたい。

家電がすべてサムスンとLGに──創業の原点

 「ある日、家の中を見渡したら家電がすべてサムスンやLGだった」──。カニ氏がコードクリサリス創業の原点として語り始めたのは、意外にも個人的な体験だった。

 「私は根っからの日本の技術・製品のファンで、ロボティクスを学ぶため、1992年に日本の大学(東京農工大学)に入りました。当時、二足歩行ロボットで日本に勝てる国はなかった。ASIMOが重心を傾けながら歩いていた時代です。私の中では、日本は常に世界のテクノロジーリーダーでした」(カニ氏)

写真2:「気づいたら冷蔵庫も食洗機もテレビも、かつて憧れた日本製品ではなく、韓国製品に置き換わっていた」(写真はイメージ。Google Geminiで生成)

 しかし、消費者としてのカニ氏は、価格と機能で製品を冷静に選んでいた。2000年代、米サンフランシスコに住んでいた頃、気づいたら冷蔵庫も食洗機もテレビも、かつて憧れた日本製品ではなく、韓国製品に置き換わっていたという。サムスンのテレビがいち早くインターネットにつながる中、当時の日本製テレビは『黒がどれだけ黒いか』といった画質の追求に傾倒していた、というのが氏の当時の記憶だ。

 「この差は何だろう。ユーザーが求める機能は皆ソフトウェアの機能なのに、と。この頃の日本のメーカーはハードウェアを偏重し、ソフトの力で新しい機能やサービスを生み出すことに目が向いていなかったようでした」

 日本が技術大国としての地位を失いつつあるのは、グローバル化の遅れや英語の問題だけではない。根本にあるのは、ソフトウェアセントリックへの転換の遅れではないか? これでは海外との差は広がるばかりだ──。この危機感が、カニ氏を日本での起業へと駆り立てた。

43歳で受講生に─ブートキャンプの効果を自ら検証

 2010年代半ばになって、米シリコンバレーでは、ITエンジニアの短期育成研修プログラムとして、コーディングブートキャンプが注目を集めていた。3カ月間でゼロから一人前のエンジニアになれるという触れ込みから、高額で、軍隊訓練さながらの厳しい研修にもかかわらずブームになっていった。

 興味を覚えたカニ氏は、自身のキャリアの中で最大の決断をする。当時勤めていた米Pivotal Softwareの要職を辞して、43歳で自らブートキャンプの受講生になったのだ。それまでコードを書いたことはなかったが、実際、3カ月後にプログラミングができるようになったという。

 「このときのブートキャンプでは、ハードスキルとしてのソフトウェアエンジニアリングは確かに学べました。でも、もしこれにアプリケーションのモダンな開発手法や『パワースキル』、つまり、グロースマインドセット、コミュニケーション、オーナーシップ、そして自信といった、チームで変革を起こすためのスキル要素も加えられたら、もっとすばらしいものができるのではないかと考えました」(カニ氏)。

 2017年、カニ氏は日本でコードクリサリス(Code Chrysalis)を共同設立する。不思議な響きを持つ社名の意味は、“コードのさなぎ”。「入校時は幼虫、ここで学んでいるときにさなぎになり、卒業後に世界に羽ばたいてほしい」という意味を込めたという。

 目標は「シリコンバレーのエンジニアと一緒に戦えるエンジニア集団を育てること」。3カ月間フルタイムで朝から夕方まで徹底的に鍛え上げるシリコンバレー流のブートキャンプが東京で開講した。

 しかし、蓋を開けてみると受講生の7〜8割が外国人。わざわざ海外から日本に来る人もいれば、日本在住の外国人も多かった、とカニ氏。米国人も為替の関係で費用が安く、3カ月間、Airbnbでアパートを借りてもトントンになるといったクチコミから、続々と参加するようになったという。

●Next:好評だった個人向けブートキャンプをやめて、組織向けに舵を切った

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