[市場動向]

3カ月で100万円超の授業料でも満員の理由は?─高度IT人材育成ブートキャンプ「Code Chrysalis」

2019年4月2日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

高度IT人材をどうやって育成するか。日本のIT人材育成には何が足りないのか?──長年の課題に対するヒントが、高度プログラミング人材育成を掲げる「Code Chrysalis(クリサリス)」という教育機関にある。3カ月のブートキャンプ=短期集中教育、講義はすべて英語で授業料は100万円。にもかかわらず、会社を辞めても入学する人が引きも切らず、定員一杯の状況が続く(といっても1期8人の少数精鋭プログラムではあるが)。いったいどんな授業が行われているのか?

 経営や事業とIT/デジタル技術が密接不可分になる中で、ハイレベルのITスキルを備える高度IT人材を育成すべきという提言が相次いでいる。例えば文部科学省と経済産業省は2019年3月26日、「数学教育に注力せよ!」という趣旨の報告書を共同でまとめて公開した(『数理資本主義の時代』)。デジタル技術の基礎を形成しているのは数学だという認識からだ(図1)。

図1:文部科学省と経済産業省が「数理資本主義の出現」を掲げ、数学の重要性を提唱している(出典:文部科学省、経済産業省)
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 同年3月29日には、政府がデータサイエンス/AIを理解し、各専門分野で応用できる人材を年間25万人育成する目標を打ち出した(『AI 戦略 2019(有識者提案)』)。大学生や高専生にAIの応用力を習得させ、それぞれの専門分野とのダブルメジャーを可能にするのが骨子。年間の大卒者は56万5000人(2018年実績)で、高専生は1万人程度であることを考えると、きわめて野心的な目標である。

 それだけ危機感が強いことの表れだが、しかし、報告書や目標だけでは心許ないのも確かである。筆者は20年近く高度IT人材を育成する国の施策や取り組みをウォッチしてきたが、だれがどのように育成・教育するのか、教育した人材の質をどう担保するのかといった実行の面で、今一歩の施策が少なくない。

 ともすれば量(人数)に焦点が当たり、質を確保するための具体的なカリキュラムや講義(授業や演習)の厳しさ、修了(卒業)の認定などで何かが足りないという印象があったのだ。そんな時に「Code Chrysalis」(コードクリサリス、訳すと「コードのさなぎ」)というスーパープログラマーを育成する教育機関があることを知った。以下、その高度人材育成の考え方や授業内容にスポットを当てて紹介する。足りない何かの多くが、この教育機関にはあると思えるからである。

米国のコーディングブートキャンプを範に設立

 Code Chrysalisは社会人向けの教育機関であり、教育プログラムである。同名の運営会社コードクリサリスの共同創業者の1人で、現在CEOを務めるのは、日本生まれ、スリランカ育ちのKani Munidasa氏だ。

 Kani氏は東京農工大学で機械工学の学位を取得した後、EMCやPivotalなどのITベンダー勤務を経て、2016年に米国サンフランシスコにあるプログラミング教育機関、Hack Reactorに入って卒業した。そして2017年夏にCode Chrysalisを設立。東京・港区の六本木ヒルズにほど近いビルの地下2階にある(写真1)。

写真1:Code Chrysalisは東京・六本木のビルの地下2階にある

 ちなみにHack Reactorは「コーディングブートキャンプ(Coding Bootcamp)」を標榜する教育機関。グーグルやフェイスブックなどがこぞって卒業生を採用する、米国では知られた存在である。

 ブートキャンプは米軍の新兵訓練のことで、新兵を一人前にするための短期集中の厳しい訓練を指す。Kani氏は次のように説明する。「米国にはプログラミングを教えるブートキャンプがたくさんありますが、玉石混交です。なかでもトップクラスに位置するのがHack Reactorです。そこでの体験がCode Chrysalisを設立するきっかけになりました」

 では、Code Chrysalisは、具体的にどんなプログラムを提供しているのか。まず、人材需要の高いJavaScriptのプログラミングスキル習得を基本にする。といってもコードを読める程度ではなく、高度なコードを書けるレベルにまで鍛え上げる。

 また、JavaScriptオンリーではなく、言語非依存型の柔軟なエンジニアを育成するカリキュラムになっている。1クラス8人と少人数でインストラクターは4人(写真2)。会話や講義、演習などはすべて英語であり、教育期間は3カ月、授業料は税抜きで103万円。期間の割に高額に思えるかもしれないが、Hack Reactorは同じ期間で1万7780ドル(195万5800円)なので、むしろ格安と言える。

写真2:Cord Chrysalisのワークルーム。設備やインテリアはシンプルだ
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