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[調査・レポート]

ITプロジェクトの成功に必須の「7つの行動特性」─元JTBのシステム責任者が大学院での研究成果を公開

要職を辞めてITを体系的に学び直した野々垣典男氏、“ありえない決断”から得たものとは?

2019年3月15日(金)田口 潤(IT Leaders編集部)

50代半ばでの早期退職は今どき、普通のことだろう。しかし情報システム子会社の社長と本社の執行役員を兼務し、かつ何らかの問題が生じたわけでもないのに退職するのはどうか? しかも本人や家族の事情、例えば介護のような止むをえない理由ではなく、「大学院に進学してシステムを体系的に学び直したい」という動機だったとしたら? そんな、ありえない行動をとった人物が、このほど大学院における2年間の研究成果をまとめた。テーマは「どのような発注者が大規模ITプロジェクトを成功させるのか」である。

子会社社長、執行役員の任期半ばで学生に転身

 旅行大手のJTBにおいて20年以上にわたってITを担当し、2014年6月にはJTB情報システムの社長、2015年6月にはJTB 執行役員に就任する。ところが任期途中の2017年4月、学生として慶応義塾大学大学院に入学し、同年6月にはいずれも退任──。野々垣典男氏の略歴である。社長や執行役員を勤め上げ、ハッピーリタイア後に大学院に入るケースはあっても、任期途中にそれらを辞めてまで大学院に行くのは聞いたことがない。”異色”としか表現しようがないキャリアだろう。

写真1:野々垣典男氏

 野々垣氏は動機を次のように話す。「理由は3つあります。まず、さまざまなシステムの失敗やトラブルを経験する中でITを体系的に学びたい、見つめたいと前々から思っていたことです。よく『ITプロジェクトの成功率は3割』と言われますが、ずっとなぜそうなのか疑問でした。

 第2は会社の不条理さ、理不尽さです。根性や徹夜でプロジェクトを完遂する時代ではないはずですが、ITの現場ではそれがまかり通っています。これに対してリーダーシップ論や組織マネジメント論を学びたいと思っていました。もう1つは50歳代半ばになって、次の人生設計を考え直したかったこと。自分の父が亡くなった歳でもあり、元気な今のうちにやりたいことをやろうと思いました。それが学び直しだったんです」。

 幸いなことに家族の賛同も得ることができた野々垣氏は、どこで学ぶかを色々と調べた上で、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科を受験。2016年春に合格し、8月にはJTBの人事に報告する。人事にとっても青天の霹靂だったはずで当然、引き留められたが、円満退社した後、2017年4月に同研究科の修士課程に入学した。

 それから2年間の学びと研究を経て、野々垣氏はこのほど修士論文をまとめた。タイトルは「どのような発注者が大規模ITプロジェクトを成功させるのか――備えておくべき7つの行動特性――」である。

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