[事例ニュース]

日本取引所グループ、準基幹システム「TDnet」をAWSに移行へ─ミッションクリティカル領域のクラウド化へ前進

障害発生時の説明可能性の確保が焦点に

2025年12月30日(火)愛甲 峻(IT Leaders編集部)

日本取引所グループ(JPX)が中期経営計画に掲げる「グローバルな総合金融・情報プラットフォーム」の実現に向け、クラウド活用を加速させている。新たに、高い信頼性が求められる適時開示情報伝達システム「TDnet」のクラウド移行を決定し、基幹領域のクラウド化に踏み出した。アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が2025年11月5日に開いた説明会に、日本取引所グループ 常務執行役CIOの田倉聡史氏が登壇。クラウドの活用で目指す将来像や検討の経緯、データやAIを生かしたサービス改善の展望について語った。

 東京証券取引所や大阪取引所、東京商品取引所を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX、本社:大阪市中央区)は、中期経営計画において、2030年にありたい姿として「グローバルな総合金融・情報プラットフォーム」を掲げている(図1)。従来のビジネスの中心である有価証券の売買に加えて、投資家をはじめとする市場関係者への情報提供を通じた価値創出を目指す考えだ。

図1:中期経営計画の一環としてデジタル活用を推進(出典:日本取引所グループ)
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 こうした事業拡大にはデータ活用の促進が不可欠であり、そのためのキーファクターとなるのがクラウドだ。同社 常務執行役CIOの田倉聡史氏(写真1)は、クラウドの重要性をこう説明した。

 「データを広く活用しようと思ったとき、従来のようにオンプレミスで直結回線を結んで外部提供するのでは広がらない。クラウドにデータを置くことで、当社が直接アプローチできる顧客だけでなく、さらに広いところまでリーチできる」(田倉氏)

写真1:日本取引所グループ 常務執行役CIOの田倉聡史氏

 アジリティの向上や付加価値創出の観点から、同社は近年、クラウドへのシステムやデータの移行を積極的に進めている。2022年4月に、データ・デジタル事業を担う専門組織、JPX総研を設立。セキュリティや監査などの統制要件をあらかじめ組み込んだ社内共通のクラウド基盤「J-WS」をAWS上に構築し、その上でさまざまなサービスを運用している。

 J-WSは新規ビジネスにおいて活用されている。その一例が2023年10月に開設を発表した「カーボン・クレジット市場」で、統制要件に準拠したJ-WS上で開発することで、着手から約4カ月でリリースに至ったという。

●Next:障害発生時の説明責任が焦点に

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