[ザ・プロジェクト]
脆弱性対処を10日から3日に─JERAが実践するマルチクラウド環境のセキュリティ強化
2025年7月31日(木)森 英信(アンジー 代表取締役)
地政学的緊張の高まりを背景に、重要インフラを狙うサイバー攻撃は増加を続け、かつ攻撃の手口も巧妙化している。ITシステムの複雑化も進む中、社会全体に大きな影響を与える事業の停止を避けるためには、企業のシステムやネットワークにある脆弱性を適切に把握・対処し、サイバーハイジーンを確保することが不可欠だ。日本の発電電力量の約3割を担うJERAでデジタルインフラサービス部 サイバーセキュリティサービスユニット ユニット長を務める山川哲司氏に、重要インフラセキュリティの現状と課題、脆弱性管理を含む取り組みについて聞いた。
日本のエネルギー安定供給を担う重要インフラ事業者
JERA(ジェラ、本社:東京都中央区)は、日本発の国際競争力あるエネルギー企業の創出を目指して、2015年4月に東京電力と中部電力によって設立された企業だ。以来、両社の燃料火力事業を段階的に承継統合し、2019年4月から本格的に事業をスタートさせている。「世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供する」というグループミッションの下、再生可能エネルギーと低炭素火力を組み合わせ、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立を実現し、アジアを中心とした世界の健全な成長と発展に貢献することを目指している。
同社は燃料の採掘・開発から発電卸売に至るバリューチェーン全体を保有する。その発電電力量は国内最大級であり、日本全体の約3割に達する。グローバル展開も進めており、LNG調達やインフラ開発に加え、各国での発電所の建設・運営や、再生可能エネルギーの導入にも力を入れている。
また、「JERAゼロエミッション2050」を掲げ、2050年までに国内外の事業から排出されるCO2をゼロにするという高い目標に挑戦している。火力発電の脱炭素化に向けては、アンモニアや水素の転換技術を軸に、既存インフラの活用と低炭素燃料の導入を両立させる戦略を描いている。
JERA デジタルインフラサービス部 サイバーセキュリティサービスユニット ユニット長の山川哲司氏(写真1)は、2019年4月から在籍。情報セキュリティポリシーや個人情報保護方針の策定・運用を含め、プロセスとシステムの両面からサイバーセキュリティに関する業務全般を担当している。

●Next:セキュリティ強化に向けた体制整備と課題
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