開発ツール/プラットフォーム 開発ツール/プラットフォーム記事一覧へ

[事例ニュース]

日産自動車、車載ソフトウェアの開発環境をAWSに移行、テスト実行時間を75%削減

2025年12月3日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

日産自動車は、ソフトウェア定義型自動車(SDV)の開発を加速するクラウド基盤「Nissan Scalable Open Software Platform」をAmazon Web Services(AWS)上に構築した。AWS Lambdaを活用した並列処理により、車載ソフトウェアのテスト実行時間を75%削減した。米Amazon Web Servicesが2025年12月1日(米国現地時間)、開催中のプライベートイベント「AWS re:Invent 2025」で発表した。

 日産自動車は、ソフトウェア定義型自動車(SDV)の開発を加速するクラウド基盤「Nissan Scalable Open Software Platform」を、Amazon Web Services(AWS)上に構築した(図1)。開発サイクルの迅速化、高度なテスト機能による品質保証の向上、グローバル開発チーム間でのボーダーレスなコラボレーション、などが狙いである。

図1:車載ソフトウェアの開発環境「Nissan Scalable Open Software Platform」の概要(出典:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
拡大画像表示

 AWS上の開発基盤は、車両ソフトウェアの開発環境「Nissan Scalable Open SDK」、車両データを集約して活用するデータ基盤「Nissan Scalable Open Data」、デジタルツインを実現する車両OS「Nissan Scalable Open OS」の3層で構成する。

 開発基盤は、ソフトウェア開発から機械学習のトレーニング、テストケースを含むソフトウェアの評価、データ処理まで、包括的な開発環境を提供。日産自動車の開発チームや、独自のアプリケーションを提供するサードパーティの開発者は、この環境を共通基盤として利用し、成果物を相互に利用できる。

開発パイプラインをAWSに移行、テスト実行時間を75%削減

 従来、車載ソフトウェア開発のCIパイプラインは、オンプレミスのサーバーで実行しており、テストに多大な時間がかかっていた。今回、「AWS Step Functions」と「AWS Lambda」を用いた新しいパイプラインをクラウド上に開発した(図2)。

図2:AWS上に構築した、車載ソフトウェア開発のためのCIパイプラインの概要(出典:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
拡大画像表示

 AWS Lambdaを活用した並列処理により、車載ソフトウェアのテスト実行時間を75%削減した。また、テストケースの実行から判定、結果のグラフ生成まで、全工程を自動化することで、開発者の作業効率を改善した。

 また、世界中に在籍する5000人以上の開発者が利用する共通の開発環境として、AWS上にワークベンチポータルを開発した(図3)。BackstageをベースとしたUIを採用し、世界中のエンジニアが統一された環境で作業できる基盤を提供する。

図3:AWS上に構築した、5000人以上の開発者が利用するワークベンチポータルの概要(出典:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
拡大画像表示

 CIパイプラインにおいては 「AWS CodeBuild」と「Amazon ECR(Elastic Container Registry)」を組み合わせることで、コンテナイメージのビルドとデプロイを最適化した。

 日産自動車はまた、アプリケーションを頻繁に更新する要求に応えるため、量産車の実ECU(制御ユニット)にコンテナ技術を採用する取り組みを進めている(図4)。AWS Gravitonプロセッサ上のLinux環境からAmazon EC2上の開発環境までコンテナで管理できるようにしている。

図4:開発環境だけでなく量産車の実ECUにもコンテナ技術を採用している(出典:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
拡大画像表示

 今後、日産自動車は、SDV開発におけるAIの活用を継続的に拡大する。2025年9月には、高速道路だけでなく市街地などの一般道を含めて走行できる運転支援技術「次世代ProPILOT」を搭載した「日産アリア」の開発試作車による運転能力を公開した。試作車は、11個のカメラ、5個のレーダーセンサー、1個の次世代LiDARセンサーを搭載している。同技術は、2027年度に国内の市販車への搭載を予定している。

関連キーワード

日産自動車 / AWS

関連記事

トピックス

[Sponsored]

日産自動車、車載ソフトウェアの開発環境をAWSに移行、テスト実行時間を75%削減日産自動車は、ソフトウェア定義型自動車(SDV)の開発を加速するクラウド基盤「Nissan Scalable Open Software Platform」をAmazon Web Services(AWS)上に構築した。AWS Lambdaを活用した並列処理により、車載ソフトウェアのテスト実行時間を75%削減した。米Amazon Web Servicesが2025年12月1日(米国現地時間)、開催中のプライベートイベント「AWS re:Invent 2025」で発表した。

PAGE TOP