[市場動向]
NTTドコモとNTT、5GとAPNを用いた「In-Network Computing」で低遅延AI映像解析を実証
2026年3月3日(火)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)
NTTドコモとNTTは2026年3月2日、分散配備された遠隔GPUリソースと5GネットワークをAPN(全光ネットワーク)で接続して、AI映像解析を低遅延で行う実証実験に成功したと発表した。「In-Network Computing(INC)」技術で、ネットワーク側で通信とAI推論処理の両方を制御することで、遠隔地のGPUリソースを用いても映像データを低遅延で解析できることを確認した。この実証をもって、6G時代における遠隔でのロボット制御に十分な低遅延を実現できる見通しを得たとしている。
NTTドコモとNTTは、分散配備された遠隔GPUリソースと5GネットワークをAPN(All-Photonics Network:全光ネットワーク)で接続して、ロボットのAI映像解析を低遅延で行う実証実験に取り組んだ(図1)。
取り組みの背景を次のように説明している。「6Gネットワーク時代に向けて、没入型のXRやAI、ロボットを活用した新たなサービスの展開が見込まれており、従来以上に大容量・低遅延のデータ転送や大規模なデータ処理が求められている。特に小型ロボットやウェアラブル端末などでAI推論を利用する場合、端末以外の計算リソースでリアルタイムに大量のデータを処理する能力が必要となる」(両社)。
一方で、従来のAI推論処理の分散実行はアプリケーションやサーバー側で制御されることが一般的であり、ネットワークはデータ転送を担うのみだった。そのため、GPUリソース間の通信遅延が推論処理全体の遅延に大きく影響し、同一拠点内など地理的に近い場所にある計算リソースの利用が前提となっていたという。
こうした課題を解決するため、両社は6GやAPNなど次世代のネットワークに必要な要素技術として、「In-Network Computing(INC)」の有効性を研究してきた。INCは、アプリケーションレイヤの処理機能をネットワーク内のデータ転送機能に移譲することで、遅延や端末の消費電力を低減しつつ、高性能・高機能なサービスの実現を図る技術。ネットワーク内にあるスイッチなどの装置へ情報処理をオフロードして、端末の負荷を低減することが期待されている。
今回の実証実験では、5Gコアネットワーク上に新たに「INCエッジ」を実装した。INCエッジは、NTTのAPN「IOWN APN」とモバイル網の接続機能に加え、AI推論処理を「推論の前段処理」と「推論の実行部分」に分割し、前段処理後のデータを遠隔GPUリソースへ低遅延に転送・振り分ける仕組みを備える。
実証実験の環境として、映像データの転送にAWS(Amazon Web Services)上に構築した商用5Gコアネットワークの優先制御機能を適用。これをINCエッジと組み合わせることで、5GネットワークおよびIOWN APNを活用した広帯域かつ低遅延なAI映像解析の実現可能性を検証した(図1)。
図1:ロボットのAI映像解析を遠隔GPUで低遅延に実行する実証実験のシステム構成(出典:NTTドコモ、NTT)拡大画像表示
その結果、通信とAI映像解析の合計処理遅延が、人間の周囲でロボットが自律制御に基づいて動作する場合に想定される要求遅延(協働ロボットの安全要求事項を定義するISO/TS 15066に基づく条件)を満たすことを確認。地理的に離れた遠隔GPUリソースを用いた場合でも、高い推論性能を維持できることを実証した。
NTTドコモとNTTは今後、機能が簡素化された端末の普及に向けて通信とデータ処理を包括的に提供するINCの技術検討・実証および国際標準化を推進し、AIやロボットがその能力を最大限に発揮する次世代ネットワークの実現を目指すとしている。なお両社は、今回の実証実験の成果を、2026年3月2日~5日にスペイン・バルセロナで開催される「Mobile World Congress Barcelona 2026」のNTTグループブースで展示している。
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