[市場動向]

富士通の「経営ビジョン2035」、計算基盤・ロボット協調・デジタルツインを新事業の柱に

2026年5月29日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

富士通は2026年5月28日、長期的な経営戦略をまとめた「経営ビジョン2035」を発表した。時田隆仁社長が説明会に登壇し、2035年度に向けて注力する3つの事業領域(Sovereign Platform、Physical AI、Intelligent Society)とサービス事業の進化について説明した。

 富士通は、長期的な経営戦略をまとめた「経営ビジョン2035」を示した。新たな事業の柱と位置付けるのは、(1)CPUや量子コンピュータなどの計算基盤「Sovereign Platform」、(2)ロボットと人が協調動作する「Physical AI」、(3)デジタルツインでデータを分析する「Intelligent Society」の3領域である(図1)。いずれもAIの活用を前提とする。また、SIやアプリケーションなど既存ビジネスにもAIを組み込む。

図1:富士通が長期経営ビジョンで設定した3つの新事業領域(出典:富士通)
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 新事業領域の市場規模は、2035年度に30兆円規模に成長すると見込む。AIで強化・拡大する既存領域と合わせると、市場規模は200兆円に達すると予測する。富士通は新事業領域の30兆円市場でシェア10%(売上3兆円規模)の獲得を目指す。営業利益率は、新たなビジネスモデルへのシフトなどによって25~30%を目指す。

計算基盤、ロボット協調、デジタルツインの3領域

 新事業の1つめ、Sovereign Platformの中核は、CPU「FUJITSU-MONAKA」と量子コンピュータである(図2)。FUJITSU-MONAKAは、2027年度の提供開始を予定しており、リリース時には他社CPUと比較してアプリケーション実行性能と電力効率がともに2倍になる想定である。すでに国内では30社との事業機会が見えており、このうち金融、通信、製造、サービスの15社が2026年度に試用機での検証を始める。

図2:新たなシステム基盤を支えるCPU「FUJITSU-MONAKA」と量子コンピュータの進展(出典:富士通)
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 量子コンピュータは、ハードウェアからアプリケーションまで全レイヤーをカバーする。2026年度に1024物理量子ビットの実機を開発し、「Fujitsu Technology Park」内に建設した量子棟に設置する。ユーザーや研究機関とともにアプリケーションも開発する。2030年度には1万物理量子ビット・250論理量子ビットを完成させ、2035年度には1000論理量子ビットの開発を計画する。

 新事業の2つめ、Physical AIでは、デジタルと現実世界をつなぐ「協調制御基盤」を自社技術ベースで構築し、ロボットが自律的に人と協働する仕組みの実現を目指す。

 現在の産業用ロボットは、各社ごとに制御やデータの仕様が異なっており、複数のロボットが協働する環境をいかに効率的に運用できるかが課題である。これに対して富士通は、AI基盤「Fujitsu Kozuchi」のラインアップの1つとして「Physical OS」を開発する。ロボットと人が協働する環境で、空間全体の活動データと各ロボットの行動データを連携させ、ロボットが空間内の全データを基に周囲の状況を判断しながら自律的に行動できるようにする。

 同領域では、米NVIDIAとの協業や米カーネギーメロン大学との共同研究を進めている。今後はロボットメーカーなどとも連携し、早期の実用化を目指す。富士通自身もユーザーとなって実践知を蓄積する考えで、石川県かほく市の「富士通ITプロダクツ」ではPhysical OSを用いたロボットの自社導入に着手している。

 新事業の3つめ、Intelligent Societyでは、産業用ロボットなどのデータを用いた「地球規模のデジタルツイン」を構築・活用する。気候や海洋の変動、地球規模のサプライチェーンの動向などをデジタルツイン上でリアルタイムにシミュレーションし、自然災害の予測や資源・エネルギーの配分、物流経路の最適化につなげる。

●Next:事業の柱であるサービス事業の今後

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