[インタビュー]

AIエージェント導入の壁はモデル性能ではない─Anthropic幹部が説く、AIを生かすシステム設計の現実解

Claude PlatformとMCPでAIエージェント活用の土台を築く

2026年7月17日(金)鈴木 恭子(ITジャーナリスト)

AI導入のボトルネックは、もはやモデルの性能ではなく、企業側のシステム設計に移っている──。そう指摘するのは、米Anthropicで「Claude Platform」の開発を担うプロダクト責任者のアンジェラ・ジャン氏だ。AIの業務活用は文書作成やアイデアの「壁打ち」といった相談・理解の段階から、AIエージェントが自律的に業務を遂行する「実行」の段階へと移りつつあるが、いまだにチャットボットや小規模なPoCの域にとどまる企業も少なくない。AI活用を実行段階へと進め、AIエージェントとして業務に組み込むためには、何が必要なのか。2026年6月に都内で開催された「Code with Claude」に合わせて来日したジャン氏と、同社エンジニアリング責任者のケイトリン・レス氏に話を聞いた。

AIは「壁打ち相手」から「業務を実行する存在」へ

 日本企業のAI活用は、米国企業などと比べて遅れていると指摘されることが多い。しかしグローバルに見ても、AI──特にAIエージェントの本格展開はまだ途上にある。米経営コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)が2025年11月5日に公開した、企業におけるAI活用の成熟度に関する調査によると、回答企業の88%が少なくとも1つの業務機能でAIを定常的に利用している一方、AIプログラムを全社的にスケールし始めた企業は約3分の1にとどまっているという。

 こうした状況について、米Anthropic(アンソロピック)で「Claude Platform」を率いるプロダクト責任者のアンジェラ・ジャン(Angela Jiang)氏(写真1右)は、企業のAI活用には明確な成熟段階があり、「AIができる作業」と「企業が実際にAIにやらせている作業」の間には大きなギャップがあると指摘する。

 最初の段階は、チャットボットとしての利用だ。法務、財務、エンジニアリングなど、さまざまな部門で、ユーザーはAIに文書を磨かせたり、考えを整理させたりする。この段階でもAIは十分に役立つ。しかし、ジャン氏によれば、AIが本来実現できる可能性とのギャップが最も大きいのもこの段階だという。

 「例えば、ほとんどの人はAIに『新しいマーケティング施策を考える手伝いをしてほしい』と依頼する。しかし、現在のAIの性能を考えれば、『自分が寝ている間に、考えた施策を実行しておいてほしい』という要求も可能なはずだ」(ジャン氏)

 つまり、現在のAIは、実際の業務を担う「業務実行」の段階にある。さらに、その先には、AIエージェントどうしが連携する「協調」も視野に入っているという。ジャン氏はこう続ける。

 「次の段階では、複数のAIエージェントが社内の業務プロセスに組み込まれ、より能動的に振る舞い、人間が見落としていることを見つけ、組織のあらゆる場所で利用できるようになる。実際、すでに自社の業務プロセスに最適な形でAIエージェントシステムを構築している企業も存在している」

写真1:米Anthropic プロダクト責任者のアンジェラ・ジャン(Angela Jiang)氏(右)とエンジニアリング責任者のケイトリン・レス(Katelyn Lesse)氏(左)

●Next:なぜAIエージェント導入が進まないか─Anthropic幹部の指摘

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