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オムニチャネル・イノベーションにこう挑む!
業種・業態の垣根を越えて進む第4の産業革命

2014年6月27日(金)

物理店舗やWebサイト、コールセンターなど、様々な流通・販売チャネルを統合するオムニチャネル。「それは決して流通/小売業だけの話ではありません。業種・業態の垣根を越えて進むイノベーション、“第4の産業革命”と捉える必要があります」。この分野の動向に詳しい富士通の廣野充俊執行役員(イノベーションビジネス本部長)は、こう言い切る。「オムニチャネルは”VRM(ベンダーリレーションシップ・マネジメント)”を経て、ヒューマンセントリックな方向になっていきます」とも話す。一体、何が進行しており、どう対応すればいいのか。廣野氏に詳細を聞く。(聞き手は、IT Leaders編集局長、田口潤)

企業と個人の力の逆転が
オムニチャネル・イノベーションを加速する

IT Leaders編集局長 田口潤● IT Leaders編集局長 田口潤

――なるほど。「オムニチャネルは流通/小売業だけに限定されない」という意味が分かりました。では話を進めますが、そうしたオムニチャネル・イノベーションを企業では誰が、あるいはどの部門が担うべきと思われますか。

 もちろんICTに詳しいCIOなどや情報システム部門が先導するべきでしょう。ですが見方を変えるとCIOや情報システム部門は大きな岐路に立っているのかも知れませんね。というのも、これまでは基幹システムをはじめとする様々なシステムを要求に応じて確実に構築し、安定的に運用していくことがシステム部門の主要な役割でした。業務の効率化を進めるためのERPやSCMなどのシステム導入も、クラウドへの移行も、その流れの中にあります。

 しかし今日、経営者がICTに求めているのは、そこではありません。もっとフロントに近いところ、「Top of the Line」と呼ばれる領域において自社の競争優位性を確立するために、ICTを武器としてどう活用できるのかと期待が変わっています。CIOや情報システム部門にそれを担う問題意識や覚悟があるか、です。

 その意味では富士通自身も同様です。変化する顧客ニーズやビジネスそのものの変革に応えるためには、従来の殻を破らなければなりません。要求仕様に基づいたシステムを作っているだけではだめです。変わり目にあることを強く認識しています。

――富士通は、どのように変わる必要があると?

 2つの視点があります。1つは富士通のビジネスをオムニチャネル化すること。富士通もICTを生かして変革するわけです。もう1つは、お客様ビジネスのオムニチャネル化をICTで支援することです。言うまでもないかも知れませんが、この2つは二者択一ではありません。むしろ様々な企業、お客様との協業を通じて、2つを一体化していかなくてはなりません。

――つまりオムニチャネル・イノベーションは、ユーザー企業の変革、富士通の変革における共通項だと。お話を聞いていると、モバイルやセンサーが普及・浸透するといった表面的な現象のもっと深いところで大きな変化が起きている気がします。

 これまで企業はCRM(カスタマリレーションシップ・マネジメント)に代表されるシステムを作り、顧客を囲い込んでLTV(顧客生涯価値)を最大化しようとしてきました。しかしモバイルなどのICTが急激に進化し普及する中で、端的にいうと、企業と消費者の間で力の逆転、立場の逆転が起こっています。

 個人は企業と対等以上の情報力を持つようになり、消費者が主導権を持って商品やサービスを選ぶようになりました。そうした中で登場したのが個人に軸足を移したVRM(ベンダーリレーションシップ・マネジメント)と呼ばれる仕組みであり、このVRMこそがオムニチャネル・イノベーションの鍵になると考えています。

――VRM?耳慣れませんが、具体的にどんな仕組みやサービスでしょう?

 例を挙げましょう。今の消費者は例えば家電製品を買うときに、量販店などで購入候補にしている商品の実物を見比べますよね?そしてソーシャル・メディアの口コミから評判を聞いて決定し、価格比較サイトを見て一番安いショップに注文を出す行動をとっています。何を隠そう、私自身もそうです。消費者が自ら様々な情報ソースを切り替え、あるいはデバイスを使い分けながら行っているわけですが、このプロセスは必ずしも簡単ではないし何よりも面倒です。

――確かに、意外に時間と手間がかかります。

 ですよね。では一連のプロセスを一貫してサポートしてくれるサービスがあったとしたらどうでしょうか。簡単に言えば、それがVRMの目指す姿です。消費者や利用者にとって最適なチャネル(タッチポイント)を選択し、必要な情報を集め、検討から購買、決済、配送、アフターサポートまで、すべてのプロセスをつなぎます。

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