「プライベートクラウドのTCO(総所有コスト)に目を向ければ、現時点では、OpenStackよりも、ベンダーのソリューションを選んだほうがベターだ」――これは米国のIT市場調査会社、451リサーチ(451 Research)からの提案だ。その根拠として同社はプライベートクラウドの構築・運用にまつわるコスト指標「クラウド物価指数」を公開している。
例外もある。構築するプライベートクラウドがミッションクリティカルなリソース集中型のワークロードを稼働させる場合だ。その際は「1エンジニア:100VM」の黄金比が当てはまらず、やはり信頼できるベンダーのマネージドサービスに頼ったほうがよいと同社は助言している。
なお同社は、低価格なパブリッククラウドと平均的なプライベートクラウドとの比較における黄金比「1エンジニア:250VM」も示した。自前で構築・管理する小規模なプライベートクラウドが、低価格なパブリッククラウドよりも安価であるためには、この比率をクリアする必要があるという。
隠れがちなファクターに留意する
今回のCPIでは、プライベートクラウドの構築・運用スキルという、TCO、構築・管理手法や機能などに隠れがちなファクターが浮き彫りになった格好だ。451リサーチのシニアアナリスト、オーウェン・ロジャーズ氏は、自社の環境や運用・展開を維持する方法をしっかり理解した専門家を雇えるかどうかは、きわめて重要な要因となると指摘。「OpenStackに精通したエンジニアを見つけることはタフで、高くつくタスクである。今日のクラウド環境構築の意思決定に大きな影響を与えている」(同氏)という。
ロジャーズ氏は続けて、ロックインによる価格上昇、サポートの先細り、機能の廃止といったリスクを挙げ、的確な意思決定のためには、長期的な観点からあらゆる側面を総合的に考慮しなくてはならないと助言する。
「今後、OpenStackが成熟に向かい、確かなスキルを有したエンジニアの数も増えていくことで、企業は、OpenStackの採用で良好なTCOを期待できるようになるだろう」とロジャーズ氏。451リサーチでは、OpenStackのオープン性がやがて、シンプルな実装・運用のアプローチを実現していけば、上述したエンジニアの人件費の削減も、長期的には不可能ではなくなると見ている。