富士通は2015年5月12日、新たなインテグレーションサービス体系「FUJITSU Knowledge Integration」と、それを実現するための環境「デジタルビジネス・プラットフォーム」を発表した。中核にはOpenStack、CloudFoundryを採用した新たなパブリッククラウドがあり、米大手のクラウドと同等の料金体系で提供する。
「顧客企業の情報システム部門が、より高度な、より付加価値の高い仕事に専念できるようにする。それが“FUJITSU Knowledge Integration”の目的です。これを通じて顧客が“攻めのIT”を実現する際のベストパートナーとなることを目指します」(富士通の谷口典彦・執行役員専務 インテグレーションサービス部門長)。
モバイルやクラウド、ビッグデータ、ソーシャル、IoT…。これらを駆使した、いわゆるDisruptive(破壊的)なシステムやサービスが米国のネット企業、IT企業を中心に広がり、日本にも押し寄せつつある。タクシー配車サービスの米Uber、個人宅を宿泊先として提供したい人と利用したい人を結びつけるAirbnbなどが、その代表例だ。
そんな中、富士通は一般企業による斬新なシステムやサービス構築を支援するべく、新たなシステム構築サービスのビジョンと「デジタルビジネス・プラットフォーム(DBPF)」と呼ぶアプリケーションの構築・実行環境を発表した(図1)。
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既存システムのモダナイズ(近代化)や高度化と、最新のITを駆使した斬新なシステム構築の両方を支援するのがポイントである。今回の発表は構想が中心でまだ“絵に描いた餅”に近いが、冒頭の言葉から明らかなように、従来の受託開発主体のインテグレーションサービスから大きく踏み出す意図を示した。では新たなサービスビジョン、そしてDBPFとはどんなものか。まず前者から見ていこう。
既存システムと、次世代型システムを明確に区分け
企業情報システムはこれまで業務を合理化・効率化したり、社内業務をサポートしたりするために構築されてきた。販売や生産、物流などミッションクリティカルな業務システム、グループウェアやレポートティングなど非定型な業務をサポートするシステムなどである。一方、最近では製品やサービスを高度化したり、従来は困難だった何かをITを使って実現する取り組みが増えている。小売業における“オムニチャネル”、製造業の“Product as a Service”といった取り組みがその例である。
米ガートナーは、このような2種類のシステム群を「Bimodal IT(2つの流儀のIT)」と呼び、開発や運用の考え方やアプローチ、使用するITなどを分けて考える必要があると提唱している。米国の著名コンサルタントであるジェフリー・ムーア氏も、前者をSystems of Record(SoR)、後者をSystems of Engagement(SoE)と名付け、企業は後者に目を向けるべきと述べる(図2、http://www.aiim.org/futurehistory)。
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富士通が打ち出したシステム構築サービスビジョンはこれらの考え方に則ったもの。SoR、SoEの双方にそれぞれ適した開発方法論やITを適用し、システムを高度化していく。まずSoR(既存の業務システム群)については、少しの変更でも時間とコストがかかってしまうサイロ化/密結合化した既存システム群を、サービス指向アーキテクチャ(SOA)に則って疎結合化。業務やビジネスの変化に対する対応力を高める(図3)。
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