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富士通が企業向けの新たなクラウドを発表、SIのモデルを刷新し「攻めのIT」のパートナー目指す

2015年5月13日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

富士通は2015年5月12日、新たなインテグレーションサービス体系「FUJITSU Knowledge Integration」と、それを実現するための環境「デジタルビジネス・プラットフォーム」を発表した。中核にはOpenStack、CloudFoundryを採用した新たなパブリッククラウドがあり、米大手のクラウドと同等の料金体系で提供する。

 もう一つのSoEについては、今はまだほとんど存在せず、要件定義も困難なタイプのシステムであることから、アジャイル型の開発手法やDevOps(開発と運用の一体化)はもとより、PoC(概念実証)やPoB(ビジネス実証)を繰り返したり、アイデアを創出するハッカソンを実施したり、といった取り組みをシステム構築プロセスに取り入れる(図4)。PoCを実施するには短期に低コストで動くシステムを組み上げる必要があることから、クラウド上のPaaS(Platform as a Service)も新たに開発・提供する(後述)。

図4 SoEの領域では、コミュニティ作りや概念実証/ビジネス実証など従来にはなかった施策をシステム構築プロセスに取り入れていく
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 当然、SoR、SoEのシステム群はバラバラに構築、進化させるのではなく、必要に応じて相互に連携できるようにする。そうすることで顧客のエンゲージメントからバックエンドのプロセスまでを一気通貫させた“攻めのIT”が実現可能になるという考えだ。そこに「お客様の知、富士通のSEが蓄積してきた知、外部の知を融合させ、新たなシステムを実現する」という。実現可能性はさておき、そういった知識、知見、叡智などを重視するところから、新たなシステム構築サービスビジョンを「FUJITSU Knowledge Integration」と名付けている。

新クラウド「デジタルビジネス・プラットフォーム」を提供

 FUJITSU Knowledge Integrationを実現しやすくするための、具体的なシステム環境「DBPF」も用意する。構成はやや複雑で、新規開発したパブリッククラウド・サービス「K5」、垂直統合型のプライベートクラウド製品「PRIMEFLEX for Cloud」のほか、現行のクラウドサービス(TPS5やA5、Nifty)も、DBPFの一部と位置づけている(図5)。ただし中心はK5であり、マルチクラウド統合管理機能を介して一元管理する。つまりTPS5やA5、Niftyなどは、DBPFの中でIaaSレイヤーの一部を担うと考えられる。

図5 デジタルビジネス・プラットフォームの概要
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 では5大陸に及ぶKnowledgeというところから命名した、DBPFのコアであるK5はどんなサービスか。特徴の1つはオープンソース・ソフトウェアを全面採用したことだ。例えばシステム資源の管理には「OpenStack」、アプリケーションの開発・実行には「CloudFoundry」、ミドルウェアに「PostgreSQL」や「Tomcat」といったものである。しかしこれだけだとIBMやHPなどのクラウドサービスと同じ構成であり、富士通ならではと言える要素がない。

 そこでK5では2つの独自拡張を施した。1つはSoRに属する既存の業務システムを運用したり、構築したりする機能。図6にある「基幹業務基盤サービス」がその一部であり、これは言わば基幹業務のためのPaaSである。富士通オリジナルのサービスで、業務プロセスやデータ定義からプログラムを自動生成するものになる模様だ。業種・業務特有のソフトウェア部品・サービス・テンプレートも用意する。もう一つがシステム自律運用支援サービスや、システム(ITインフラ)自動構築サービス。これらはクラウド環境の利用・運用には欠かせないのでK5独自とは言えないが、使い勝手や可用性を担保するため、富士通オリジナルのものを提供する。

図6 デジタルビジネス・プラットフォームの構成要素
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 K5はすでに稼働しており、富士通は自社の既存システムをK5へ移行する作業に着手したと発表している(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/12083)。これを通じてK5の機能や動作検証を進め、2015年第3四半期以降にK5を一般向けに提供する計画だ。重要な利用料金については、「主要な海外クラウドサービスと同等レベルにしていく」(遠藤 明 執行役員デジタルビジネスプラットフォーム事業本部長)という。

 本当にこの料金体系を実現できるのか、既存のシステム販売・構築事業との棲み分けはどうするのか、富士通の営業やSEがこの事業モデルを実践できるのか、さらには技術的に成熟するまでに相当の時間を要するのではないか、といった疑問は残る。だが谷口専務は「デジタルビジネス時代ではあらゆる企業が変革を迫られる。富士通自身も、FUJITSU Knowledge IntegrationやDBPFを通じて変革していく」と言い切る。実際、足下のシステム需要は株価の回復やマイナンバー制度の施行などもあって堅調だが、いつまでも旧来型のシステム・インテグレーション事業を続けられないことも確か。今回の発表は、富士通流の背水の陣と考えるのが正解かも知れない。

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