経済産業省は2015年6月4日、「平成26年情報処理実態調査」の結果を発表した。新しいビジネスモデルの創出や、ビジネス領域の拡大など、ITを“攻め”に活用できている企業はまだまだ少ないという状況が見て取れる。主要なトピックについて以下に見ていこう。
「情報処理実態調査」は、国内企業のIT利活用の実態を把握するために1969(昭和44)年から毎年実施しているもの。資本金3000万円以上、および従業者数50人以上の民間事業者が対象で、今回は1万1730事業者に調査を実施。5222の回答を得た(回収率44.5%)。なお、調査期間は2013年4月1日~2014年3月31日の1年間である。
まずは「攻めのIT経営」の実態から。これは、新しいビジネスモデルの創出や、ビジネス領域の拡大といった目的における、IT活用の取り組み状況を尋ねたものだ。「全社的に活用」との回答はわずか19.3%にとどまり、「ITを活用していない」はその倍以上の42.7%にも達している(図A)。
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IT投資の「意図」と、その効果の「実感」を見たのが図B。上から2つ「売上や収益の改善」「顧客満足度の向上や、新規顧客の開拓」は、攻めのIT活用の代表的な目的と言える。そうした意図をもってIT投資している割合は順に66.4%、58.7%と過半を超えるものの、他の項目(業務効率化やリスク対応など、どちらかというと守りに位置付けられれるもの)に比べると相対的に低い。「売上…」「顧客満足…」の攻めの2項目について、投資後の評価を見ると、「実際の効果があった」と肌身で感じている割合は37.1%、37.0%の水準で、こちらも他項目に比べて実感が薄いようだ。
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攻めのIT活用を見据えて取り組むには、それを支え実践する人材の育成が欠かせない。その状況を尋ねた結果は、「特段行っていない」が47.6%と半数近くを占める。それに次ぐのは「IT部門向けに実施」(32.4%)で、これはむしろ育成の体制があってしかるべきところ。企業全体としてリテラシーの底上げを図る取り組みは、まだまだ後手に回っていると言えそうだ。
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ビジネスに直結するIT戦略の実施や人材育成などは、それらに問題意識をもって陣頭指揮を執り、社内でも権限を持ったリーダーがいなければ、うまく進まないと言われる。実情を推し量るものとして、本調査ではCIOの設置状況も尋ねている。その結果を見ると、「CIOがいない」という回答が7割を占めた。残り3割には何らかの形でCIOが任命されているが、それでも多数派は「兼任」(26.2%)であり、「専任のCIOがいる」との回答はわずか3.3%だ。「CIOを設置していない理由」では、46.2%と実に半数近くが「必要性を感じていない」としている(図D)。
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「売上や収益の改善」「顧客満足度の向上や新規顧客の開拓」といった目的別に、IT投資が効果に結び付いているとの実感と、CIOの設置状況の関連性を見た結果が図Eだ。どの目的をみても、「効果があった」とする回答の割合は、CIOがいる、それも専任者である方が高くなる傾向にある。ITの領域で責任と権限をもった指揮官が明示的に設置されている方が、効果の実感に直結しやすいことが読み取れる。
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