経済産業省は2015年6月4日、「平成26年情報処理実態調査」の結果を発表した。新しいビジネスモデルの創出や、ビジネス領域の拡大など、ITを“攻め”に活用できている企業はまだまだ少ないという状況が見て取れる。主要なトピックについて以下に見ていこう。
クラウドやモバイルの導入状況
昨今のITトレンドへの対応状況はどうか。その一例としてクラウドの利用率の推移を見たのが図Fだ。「クラウド関連の費用が発生した」つまり、何らかの形でクラウドサービスを利用しているという企業の割合は年々増加傾向にあるものの、それでも35.2%にとどまる。今後の利用計画においては、「具体的に導入する予定」は2割ほどで、次年度も利用率が一気に高まることはなさそうだ。
拡大画像表示
スマートフォンやタブレット端末の業務利用を尋ねた結果が図G。「スマートフォンのみ」「タブレット端末のみ」「両方」を総合すると、すでに半数が利用している。過去3年の傾向から見ると、さらにビジネスシーンに浸透していくものと見られる。業務利用の上での課題としてトップに挙がるのは、はやり「セキュリティへの不安」。それに続くのが「業務利用ルールの策定が難しい」「システム環境を整備できない」といったもので、時宜に沿ってスマートデバイスの利用は進めるものの、それをつつがなく支える体制がなかなか追い付いていない状況が見て取れる。
拡大画像表示
ビジネスに直接貢献するアイデアが求められたり、クラウドやモバイルなど新しいITへの対応を求められたり、IT部門が対処しなければならない領域は確実に増えている。だが、そこに携わる要員の数は増えず、むしろ微減しているという結果も明らかになった(図H)。まだ他に、興味深い調査結果が出ているので、詳細は経済産業省が発表した報告を参照していただきたい(http://www.meti.go.jp/statistics/zyo/zyouhou/result-2/h26jyojitsu.html)。
主要トピックを見る限り、日本企業のIT活用はまだまだ成熟しておらず、改善の余地が多く残されている。もっとも調査結果はあくまで“平均像”であり、中にはIT活用こそビジネスの核心と位置付けて全社を挙げて取り組む例もある。例えば「攻めのIT銘柄」。製品/サービスの開発やビジネスモデルの革新などの“攻め”にITを活用し一定の成果を上げている企業を、経済産業省と東京証券取引所が選定したもので、先頃、18社が公表された(参照:<経産省と東証が「攻めのIT経営銘柄」に18社を選定>)。
日頃の取材でも、経営者が筆頭になってITの可能性を理解し、次々と手を打っている企業も少なからずある。今回の調査結果に照らせば、攻めのIT活用に邁進している企業と、そうではない企業が二極分化していると見ることもできる。後者が何の手立ても打たないとしたら、その差は開くばかりなのは明らかだ。
今回の調査結果を1つの材料に、まずは自社のポジションを理解する。そこから見えてくる課題に強い問題意識を持ち、1つひとつを先送りすることなく、具体的なアクションプランに落とし込もうとする人が、1人でも多く出てくることを期待したい。