[金谷敏尊の「ITアナリストの仕事術」]

仕事術No.19「イノベーションの心得」

2016年2月1日(月)金谷 敏尊(アイ・ティ・アール 取締役/プリンシパルアナリスト)

ビジネスイノベーションが叫ばれる今、どのようにそれを実現するかは、新規ビジネス開発や業務改革に携わる人にとって大きな悩みの種であるに違いない。ただし、多くのケースを見聞きしたり、手掛けたりすると、成否に影響するある種の条件のようなものはあると思われる。そこで、今回は新ビジネスの創造をテーマに、イノベーションの進め方について考えてみたい。

 イノベーションの必要性を声高に唱える識者は数多いし、重要性を訴える社内の幹部も少なくない。しかし、そうした人々に「では、実際に新ビジネスを立ち上げて利益を出して見て下さい」と言うと、途端に寡黙になったり、言い訳をしたりする。イノベーションは、傍観者が理屈をつけられるような簡単な取り組みではない。他社が発想しない独自のビジネスアイデアが不可欠だし、リスクを覚悟でそれを推進する強力な意思も必要だ。人がやっていないことをやるので、教科書が存在しないか、おおよそ有っても役には立たない。そこに難しさがある。

 最近は、ベンチャービジネスを立ち上げたり、デジタル技術を生かして業務を改革しようとする機運が増している。私の友人・知人にも、ビジネス開発部門に異動になったり、そうした責務を与えられたりするケースが少なくない。だが、長年ビジネス開発に取り組んできた専門職であればまだしも、ある日突然「さあ、これから新しいビジネスを創ってください」と言われても、優れたビジネスアイデアを生み出すのは容易でない。ほとんどの場合、現行のビジネスの延長線上の発想しか出てこず、既存事業の拡張や業務改善といったレベルに留まる。

思考のリミッターを外す

 以前に、ある大手ITベンダーで次世代のITビジネスを企画するプロジェクトを手伝わせて頂いた。集まったのは、各部門の一線で活躍するエース級の人材である。私は幾つかの方法論に沿ってビジネスアイデアを発散することからスタートした。ところが、出てきたアイデアはいずれも評価に価する水準のものではなかった。アイデアは、いずれも正論であり、採用すれば、特定の顧客の課題解決を促し、既存のビジネスモデルを改良できるように思われた。しかし、現在の市場にインパクトを与え、新たな需要層を掘り起こしたり、市場を創生したりするようなダイナミズムを伴うものでは到底なかった。

 その原因を突き止めるために、集まったアイデアを改めて見直してみた結果、ひとつの事実に突き当たった。それは、いずれのメンバーも多かれ少なかれ「リミッター」を付けて発案しているという点である。つまり、このアイデアはビジネス慣習上問題がある、技術的におそらく実現できない、他部門の事業ドメインなので検討すべきでない、といった「制約」を無意識に設定していたのである。これでは革新的なアイデアなど出るはずもない。

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