一定期間会社に勤めていると、その会社の収益構造というものが徐々に分かってくる。この事業は儲かっているかどうか、どこにコストがかかっているのか、稼いでいるのは誰か、自分はどれだけ貢献できているのか。そのように収益やコストを意識して仕事に取り組むことは、自身を客観的に評価することにつながる。ビジネスパーソンとしての成長を期待できるようになる。
概して人は、プライベートな収入や支出には関心が高い。スーパーの特売情報に目を凝らし、ポイントカードの特典に注意を払う。最近では、量販店に出向いて商品を確認した後に、安価なネットショップで購入したりもする。私もオークションを駆使してモノを売り買いし、日々節約に励んでいる。そのように日常生活のなかで損得勘定するのは、極めて一般的なことだ。
では、ビジネスの現場でも同様に損得勘定が行われているだろうか。言い換えれば、高いコスト意識をもって仕事に取り組んでいるといえるだろうか。これは、所属する部門がどこであるかによって事情は異なると思われる。ただし、責任が増し、立場が付いてくれば、自ずとこれまで以上に、企業の業績、事業収益、業務効率、生産性といった管理指標と向き合うこととなる。同じ会社に長くいようが、転職を繰り返そうが、企業が雇用者と被雇用者で構成されている以上、このことは避けられない。キャリアアップを目指すなら、コストに強くなることが奨められる。そして、それにはまず自身が「稼げる人材」になることだ。職種によって程度の違いはあるが、売上や利益に貢献しない人材を会社は基本的に認めないからだ。
フルコミッション(完全歩合制)の職種は別として、新入社員の場合はなおさら「稼げる人材」になることを意識したい。入社直後の一定期間は、よほどの逸材でなければ給料以上稼ぐのは難しい。何年後かにに給料分を稼げるようになり、さらには収益をリードする人材に育ってくれることを信じて、企業は先行投資しているのである。それまでの間、会社は痛みに耐えている、言い換えれば先人や先輩があなたの給料の面倒を看てくれているのである。であるならば、自分の成長を信じてくれることへ感謝し、尽力したいものである。
給料の3倍を稼ぐ
世間一般では給料の3倍を稼いでやっと一人前だと言われる。それまでは半人前。厳しい言い方をすれば、会社に必ずしも必要な存在でない。ビジネスパーソンとして成長を見据えるなら、この「給料の3倍稼ぐ」をひとつのマイルストーン(道標)にすると良いだろう。もっとも雇用者への支出水準は、企業により異なるので、3倍という数字が常に正しいわけではない。しかし、企業は雇用者に対して保険や福利厚生など給与以外の相当の負担をしているのが事実であり、そのことは理解しておきたい。
●Next:「会計」の習得がもたらすもの
会員登録(無料)が必要です
- 仕事術No.21「知識を習得する意味」を再考する(2021/08/10)
- 仕事術No.20「単純化することの価値」(2017/04/12)
- 仕事術No.19「イノベーションの心得」(2016/02/01)
- 仕事術No.17「合理主義と成果主義」(2015/05/27)
- 仕事術No.16「一歩先の説得術」(2015/01/06)