地方銀行大手のふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、主にITベンチャー投資を専門とする子会社を4月1日付けで設立したと発表した。地域経済の活性化や地方創生への貢献に加えて、FinTechなど自らの金融サービスの高度化も目指す。成果次第では、ほかの業種におけるベンチャー投資の呼び水になる可能性がある。
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が設立したのは、ふくおかテクノロジーパートナーズ(FTP、福岡市、河﨑 幸徳社長)。資本金は10億円で「FinTechを中心に革新的な技術と先進的なビジネスアイデアを保有する新興企業の支援・育成を担う」計画だ。主に九州エリアのベンチャーやFinTech企業を投資先対象にする。投資に加え、大学との共同研究や既存有力企業との橋渡し、あるいはスタッフや専門家の紹介といったハンズオン支援も提供する。
FFGはこれまでも、産学官の連携促進や、ベンチャーコンテスト「X-Tech Innovation 2015」の開催など、ベンチャー発掘やビジネスマッチング活動を実施してきた(関連記事)。この3月には、福岡県飯塚市のベンチャー企業であるハウインターナショナル(正田 英樹社長)と、ブロックチェーン技術を活用した金融サービスを共同研究すると発表している。
しかし銀行による事業会社への投資は、投資先企業の基本金の5%未満というルールの縛りを受ける。ベンチャー投資は要件により適用除外もあるが、その要件は必ずしもクリアとは言えない。FTPの設立で、これを回避すると同時に投資先選定の意思決定に要するスピードを速める。
金融業界ではここへ来て、東京三菱UFJ銀行(MUFG)や三井住友銀行(SMBC)
、みずほ銀行といった大手行を中心に、ベンチャー発掘や投融資の動きが活発化している。例えばMUFGは2015年11月に「MUFG Fintech アクセラレータ」というオープンイノベーションの取り組みを開始することを発表した(同プログラムのサイト)。
SMBCは、この2月に日本総合研究所などとともに事業コンソーシアム「Incubation & Innovation Initiative」を発足(発表資料)。みずほ銀は2015年の段階で400社、総額100億円のベンチャー企業への融資を実行済みといった具合だ。FFGによるFTPの設立はこの流れに則ったものと言える。
とはいえ、こうした取り組みが奏功するとは限らない。まず投資する側である金融機関の目利き力が問われる。FTPの社長を務める河﨑社長は、FFGの情報システム部門の経験が長く、MUFGのFintechアクセラレータを牽引する村林聡氏はグループCIO。ITに関する知識や見識は問題ないにせよ、ベンチャー投資投資となるとそれだけでは済まないはずだ。
一方ベンチャー企業側に対しては「FinTechという観点では、日本のベンチャーは技術や人材の厚みが不十分」という指摘もある。これらの課題を乗り越え、金融業界におけるベンチャー企業との蜜月は何を生み出すのか?そもそも何かを生み出せるのか?製造業やサービス業など他業界の試金石ともなり得るだけに、目に見える成果が期待される。