企業が「デジタル変革」の潮流に対応し進化を続けていくにあたって、IT部門が担うべき役割は今まで以上に高まっている。ITがビジネスそのものとなった現在、アジリティ(俊敏性)を身につけたIT部門へと変わる必要がある。「1つヒントとなるのは、今から40年以上前のかんばん方式によって生産改革を成し遂げた自動車業界の取り組みだ」。そう指摘する米レッドハット(Red Hat)のラーズ・ヘルマン氏(写真1)に、この大変革に必要不可欠なDevOpsのアプローチでカギを握るコンテナ技術の可能性を尋ねた。
DevOpsと自立性をコンテナ技術で実現
デジタル変革に対応したITのあるべき姿について、ヘルマン氏はさらに深掘りをする。
激しく変化していくデジタルビジネスに追随していくためには、より短いサイクルでアプリケーションを開発し展開していかなければならない。ご存じの通りDevOpsで目指すスタイルだ。同時に、それを支えるインフラのセキュリティを担保することも忘れてはならないとヘルマン氏は話し、こう続ける。
「これまでは、Red Hat Enterprise LinuxやWindowsといったOSがセキュリティ担保など役割を果たしてきたわけだが、DevOpsの世界になるとOSそのものの定義が大きく変わってくる。ある種の分散コンピューティングのインフラでもあるクラウドそのものが、これからのOSとなる」
置かれた立場によって“クラウドOS”に対する捉え方は異なる。アプリケーション開発者はランタイムとサービスへの即時アクセスや、連続的なデプロイを支えるレジリエンシー(Resiliency:弾力性)、スケーラビリティなどを求める。一方で運用側は、堅牢で統一された運用モデル、利用率の最大化、コンプライアンスとセキュリティの維持などを重視する。
したがって、共有インフラ上で多数のサービスを容易に提供・保守・使用出来る能力を提供することのできるクラウドOSが理想となる。「DevOpsの世界において、アプリケーション開発者と運用側は常に協業していく必要があるが、そのためにも相互依存する部分は可能な限り少なくしなければならない」とヘルマン氏は語る。
これを実現するのが「コンテナ」と呼ばれる技術である。コンテナを利用することで、DevOpsの世界におけるアプリケーションとプラットフォームのそれぞれの自立性を確保することが可能となる。「標準化による大幅な効率性の向上」「オートメーションによるサービスレベルの向上」「運用の共通化」といったコンテナの価値は、アプリケーションのパッケージングすることで開発・運用で効果を得ることが可能である(図2)。ヘルマン氏は次のように説明する。
「アプリケーション開発者と運用側は、それぞれ完全に独立したプロセスの基でコンピューティング、ストレージ、ネットワークにアクセスすることができ、セキュリティについても強化することが可能になる。コンテナはクラウドOSの一部であり、見方を変えればOSを切り分けた1つ1つがコンテナということになる」(図3)
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既にコンテナを広範に活用している企業では、業務効率が大きく改善し、アプリケーション開発のスピードも上がったという。従来では考えられなかったほど運用プロセスの自動化が進んだ。そして社内のオーナーシップを変える共に、ビジネス上の目的と、それに合致するスキルセットを持っている人材を最適に配置できるようになった。「自動車の世界でかんばん方式が起こしたのと同じ変革を、今まさにITの世界においてコンテナが起こしている」とヘルマン氏は語る。