昨今話題となっているAIやビッグデータの活用をはじめ、データ分析・管理の効率化を図るためのマスターデータ管理を実施していくにあたり、避けて通れないのがデータ移行である。データマネジメントの領域で多くの実績を積み重ねてきたリアライズのキーパーソンが、「データマネジメント2017」のセッションにて、データ移行における注意ポイントについて、自身の経験に基づき詳細に解説した。
データ移行の計画はシステム開発の初期段階から策定する
昨今、企業におけるビッグデータの活用が進み、AIにも注目が集まる中、それらの新しいテクノロジーを用いた新システムを開発するにあたって不可欠となるのが、旧システムから新システムへのデータ移行だ。
創業以来、データマネジメントの領域において実績を積んできたリアライズのマーケティング・営業部、ソリューション開発部 部長の櫻井崇氏が自らの経験を踏まえ、データ移行に際して留意すべき、数々のポイントを解説した。
はじめにデータ移行の計画から見ていこう(図1)。一般にデータ移行は、新規システム開発が発生した場合に行われる。そして、システム開発は大きく、要件定義、基本/詳細設計、開発、テスト、本番稼働といった流れで進められるが、櫻井氏は、「データ移行の計画は開発プロジェクトの最初の段階から考えるのがベストである。つまり、基本設計までにデータ移行計画書の初版を作り上げるわけだ」と強調。その理由について「データは、最初に開発テストに相乗りさせなければならないからだ」と説明する。
また、既存データの確認作業も同時に進めていかなければならない、と櫻井氏は訴える。従来のシステムで使われているデータの値の整合性がとれていなければ、新システムに投入した際にエラーが発生し、結果、新システムが動かないといった惨事になりかねないためだ。
「移行対象となるデータに対して問題がないか確認すると共に、エラーに対して補正が必要な場合には、どのタイミングで補正を行うのか、システム開発スケジュールと照らし合わせながら、あらかじめ考えておかなければなりません」(櫻井氏)。
続いて櫻井氏は実際の計画書作成のポイントについて解説。留意すべき点として、(1)移行要件の整理、(2)移行の方法、(3)移行の体制、(4)役割分担、(5)移行スケジュール、(6)移行における共通事項、(7)移行対象の選定、を挙げる。
「最初の段階で考慮してほしいのはデータ移行の方法として、一括で行うのか、または段階的に行なっていくか、ということだ。これを決めておかなければ、後々、この方法を巡って手戻りが増えてしまうおそれがある。また、段階的移行を選択する場合には、同一種のデータの分割は極力避けることが重要だ」と櫻井氏は説明する。
また、「移行における共通事項の項目では、データ移行に共通する基本方針について検討しなければならない。具体的には、データ変換方法やタイミング、エラーデータの取り扱い、現行システムから新システムへの移行時に発生する外字などの変換、といった基本方針も検討しておかなければならない」と補足する。
データ移行の実施に際して留意すべきポイント
そして、データの移行手順を考えるにあたってのポイントが、(1)移行の流れ、(2)システムの状態、(3)移行作業内容、(4)移行リハーサル、(5)移行結果の検証、だという。また、見落としがちなポイントとして、(1)移行ツールの基本方針、(2)移行の影響、(3)段階移行中の運用への影響、について考慮すべきだという。
「データ移行で使用するツールの基本的な動作や設計方法など、移行ツールに関する基本的な方針について検討しておかなければならない。加えて、移行ツールの保証する範囲や、人手でサポートする部分を把握することも重要だ」(櫻井氏)。
そのほか、移行対象であるシステムと外部インタフェースを保持する関連システムと新システムの移行による影響についても検討すること、特に外部機関が関係する場合、移行作業中にデータが送信されないことについて、必ず確認を行うことが重要だという。
こうして作成した移行計画に基づき、実際のデータ移行を行っていくわけだが、その前段階で行われるテストについても、「データ移行の精度の上げていくためには移行テストと移行リハーサルの2段構えで行っていくことが重要である」と櫻井氏は述べる。
「さらに、総合テストを実施していく中で、データ移行の精度を向上させるために着目すべき項目がある。例えば、移行処理完了後、営業初日の運用に問題ないことを確認するといったことが考えられる。移行処理直後の初日だけ運用が異なる場合があるため、移行が完了したと油断していると、大きな業務障害を引き起こすことがあり、それが呼び水となって、業務継続に支障をきたす場合がある」(櫻井氏)。
最後に櫻井氏は、データ統合を兼ねたデータ移行についても説明を行った。データ統合の形態には大きく、(1)複数のマスターデータを統合マスターに集約する「解析型」、(2)統合マスターと周辺システム双方で更新結果を同期・共存する「マスタハブ型(調和型)」、(3)統合マスターでマスターデータを一元管理する「マスタハブ型(統合型)」がある(図2)。自社の要件やシステムの状況を見定めながら、どの形態を目指していくのかを検討してかなければならない。
櫻井氏は、「新しい技術の導入や、データ分析を的確に行うには、事前の準備、すなわちデータ移行が非常に重要となる。顧客データの移行、およびマスターデータ管理などを行っていく際には、データクレンジングやデータリメイキングなどの処置も必要となるだろう。したがって、プロジェクト計画の当初から十分な予算を確保すると共に、しっかりとしたシナリオを策定してデータ移行を進めていただきたい」と強調し、セッションを締め括った。
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