[イベントレポート]

アプリケーションの“俊敏性”に焦点、OpenShiftなどでITオートメーション目指す

Red Hat Summit 2017 レポート(2)

2017年5月16日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

2017年5月2日~4日、米国ボストンで開催されたRed Hat Summit 2017。レッドハットは例年にも増して多様な製品を発表した。次世代のアプリケーション開発のあり方やITインフラ運用を考える上で示唆に富むため、採用云々は別に知っておいて損はない。そこで基調講演の内容も含めて、発表のあった新製品を紹介しよう。

アプリケーションの開発・稼働までを一貫する

 実は同CEOが基調講演したのは2日目。最も重要な1日目の基調講演は、製品と技術を担当するPaul Cormier社長が仕切った。スポットを当てたのは、新製品や新たな企業提携である。というと「単なる製品発表か」と考えがちだが、さすがによく練られており、次世代のITインフラの姿を考える上で多くの示唆を含んでいるように思えた。

 Cormier社長はまずこう話す。「(調査によれば)企業ITのテーマは、2016にはコスト削減、セキュリティ、自動化がトップ3だった。それが2017年にはクラウド戦略、アプリケーション開発の迅速化、既存ITの最適化・モダナイズ、に変わった。これらを満足するにはクラウドネイティブの開発/アプリケーションが必要になる」。

 この言葉には補足が必要かも知れない。多くの企業においてIT環境は、ベアメタル(物理サーバー)、仮想サーバー、プライベートクラウド、パブリッククラウドと複雑化している。ハイブリッドクラウドやマルチクラウドも広がる。「我々の調査では顧客の59%はマルチクラウドを計画中である」(同)。その分、開発者や運用担当者の負担は重くなる。個々のIT環境に合わせてアプリケーションを開発し、稼働させ、運用する必要があるからだ。

 しかし例えば開発者からすればIT環境のことを気にかけ、環境に合わせてアプリケーションを修正したりセットアップするのは無駄な作業。それを避け、開発に専念できる「Any Application Any Environment」が理想である(写真4)。それがクラウドネイティブの開発/アプリケーションであり、同社は必要なソリューションを提供するというわけである。

写真4 レッドハットが目指すIT環境

 実際には、Red Hatが発表した事柄は、大きく開発関連と運用関連の2つある(表)。前者の1つがAWSとの提携(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/14522)。両社は共同でレッドハットのPaaS「OpenShift Container Platform(以下OCP)」からAWSの各種サービスにダイレクトにアクセスできるようにすると発表した。各種サービスとはMySQL互換DBのAurora、 データウェアハウスのRedshift、 Hadoop互換のEMRなど。AWSの設定などを気にかけることなく、OCPの1機能であるかのように利用できる。しかもOCPがAWS上にあっても、オンプレミスのIT基盤にあっても差はない。「Any Application Any Environment」を、地でいく提携である。

表 発表された製品。開発関連と運用管理関連がある
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OpenShiftの開発環境を年内に無料で提供へ

 製品では、すべての操作をWebで行えるオンライン開発環境「OpenShift.io」を発表した(写真5)。OCP自体はDockerコンテナをデプロイし、稼働させる実行環境としての意味合いが強い。開発に特化したOpenShift.ioを提供することにより、開発から稼働まで一貫できるようにするのが目的だ。といってもOpenShiftの世界にロックインするのが狙いではない。

 OpenShift.ioの実体は、統合開発環境として知られるEclipseのクラウド版「Eclipse Che」やマイクロサービスのプラットフォーム「fabric8」、自動テストツール「Jenkins」といったOSSの開発ツールを内蔵し、Webユーザーインタフェースをかぶせたもの。OSSに馴染んだ開発者にとっては馴染みのあるツール群で構成する。

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