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[ユーザー事例]

IoTやAIを活用した新規事業の創出へ、IDCフロンティアがコンテナ技術の「OpenShift」採用

2017年7月31日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

データセンター大手のIDCフロンティアは、米Red Hatのコンテナアプリケーション実行環境「Red Hat OpenShift Container Platform」を採用した。同社が営むクラウド事業の一環として提供するのではなく、自らコンテナアプリケーションを開発・実行するのが採用の目的という。

 IoTやAI、あるいはロボットなど様々なデジタル技術に取り組むために何が必要か?アプリケーションをマイクロサービス化するコンテナ技術は、欠かせないピースの1つである。アジリティ(俊敏性)や変化対応力を高める必要があるからだ。ドイツ銀行や独BMW、英バークレイ銀行などの取り組みを見ても、それは明らかである(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/14539)。

 しかしコンテナ技術は敷居が高いのも確かだろう。まだ進化の途上で安定した技術とは言えないし、それを無理に採用するほどのアジリティが必要なアプリケーションはごく少ない。使いこなせるエンジニアもほとんどいないし、育成する教育サービスもないといった課題があるからだ。そんな中、データセンター大手のIDCフロンティアが、コンテナアプリケーション実行環境「Red Hat OpenShift Container Platform(以下OCP)」を採用したことを発表した。様々な課題をどう考えたのか、現段階でコンテナ技術に取り組む理由は何かを、同社に聞いた。

DC事業とは異なる、IoTやAI関連事業の拡大が目的

 まずOCPを採用した目的は主力のデータセンターやクラウド事業の一環ではなく、アプリケーション寄りの新規事業を推進するためだ。IDCフロンティアの大屋誠氏(データビジネス本部基盤開発部長)は、「IoTや機械学習、AIが浸透する中で、データを集めて分析するサービスへのニーズが強まると考えています。そんなサービスを推進する上で重要なのは、PoC(概念実証)を何度も高速に繰り返せること。(アプリケーションを)作っては変更し、拡張するDevOpsの実践です。これからを考えるとコンテナ技術は必須でした」と説明する。

 さらにこうも話す。「DevOpsをはじめとして開発のやり方をモダンにするには、開発・実行環境を変えないと上手くいきません。形から入るわけです。もちろんOCPのような新しい環境にすると最初は戸惑いや学習することが多くなりますが、一方で何でこういう仕組みなのか、機能があるのかを考えることになりますので、それが示唆になります」。

 では複数あるソフトウェアの中で、なぜOCPだったのか。インフラ系を中心にエンジニアを数多く抱えるIDCフロンティアなら、コンテナのオーケストレーションツールとして有力な「Kubernetes」(米Googleが開発したOSS)や、OCPのオープンソース版「openshift origin」を採用する考えもあったはずだ。使いこなす技術は必要にせよ、利用料金はかからない利点がある。それにPaaSでいえば、データセンター事業者やクラウド事業者が採用を表明している「Cloud Foundry(CF)」もある。

 「この領域の技術は日々、新しくなっており、Kubernetesから開発・実行環境を作り込むには常にキャッチアップが必要になります。openshift originも同じで、我々はそれをやりたいわけではありませんでした。使える環境が欲しかったのです。OCPかCFかは検討しましたが、IoTに欠かせない様々な通信プロトコル対応でOCPが優位と判断しました」。大屋氏は、こう説明する。

 そうして採用を決めたOCPだが、すんなりと活用に至ったわけではない。一例がOCPを稼働させる同社のIaaS「IDCFクラウド」との関係。IDCFクラウドはCloudStackというソフトウェアを使っているが、「仕様の上でOCPとCloudStackは負荷分散の考え方が異なります。こうした点を理解し、使えるようにする準備には時間が必要でした。半面、利用者の立場でIaaSを使ったことはサービス事業を推進する上で役に立つと捉えています」。

介護施設のデータ分析で実証実験を実施

 IDCフロンティアはOCPを採用しただけではなく、すでにアプリケーションも開発している(図1)。介護施設運営大手のウチヤマホールディングス、それに人の行動をセンシングするソフトウェアやアルゴリズムを研究している九州工業大学と共同で、介護士/看護師の行動をIoT(センサー)で認識。新人とベテランの動きの違いや時間帯ごとの繁閑の定量把握、施設内フロア(エリア)ごとの違いなどを可視化する実証実験だ。

図1 介護施設の行動を分析するスキーム
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 実際にはかなり“重装備”の実験であり、まずウチヤマが運営する介護施設で働く合計27人の介護士・看護師にセンサータグ(テキサス・インスツルメンツの「SimpleLink」)を付けてもらい、10分の1秒ごとに加速度、気圧、温度、湿度、地磁気のデータを取得できるようにした。加えて、実施する行動や完了時間を登録するためのスマホも全員に配布している。

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