[インタビュー]

意思決定者とデータの“遠距離恋愛”を解決したい──Domo幹部

2017年10月26日(木)川上 潤司(IT Leaders編集部)

データを経営に活かす。前々からある重要なテーマであるにも関わらず、未だに成熟が見られない。そこに潜む問題とは何なのか。どんなプラットフォームが求められているのか。後発ベンダーながら、この分野で存在感を高めているDomoでチーフオペレーティングオフィサー兼チーフアナリティクスオフィサーを務めるマット・ベルキン(Matt Belkin)氏に話を伺った。

 販売管理や顧客管理、会計管理…企業には数々の業務システムが導入され、そこにはビジネスに関わる様々なデータが蓄積され続けている。さらに最近ではWebのクリックストリームや各種センサーが生成するシグナル、ソーシャルメディアでの発信など様々なタイプのデータ、いわゆるビッグデータも身近なものとなり、その利活用は業種を問わず重要なテーマとなっている。

 ビジネスの次の一手を考える時、データでしっかりと現況をとらえて、より効き目のありそうな策を練るのは当然のアプローチだが、理想的な環境が整っていて思い通りの効果を上げている企業は果たしてどのぐらいあるのだろう。

 大量のデータを保管するデータストアや洞察を導くアナリティクスなど“点”としてのテクノロジーは着実に進化している。それらを上手く組み合わせたデータ活用のソリューションも裾野を拡げている。しかしながら、経営の加速に不可欠なものとして、もっと言えば、意思決定の最適化に資する基盤として機能しているケースは必ずしも多くないようだ。

意思決定者とデータとの距離が遠すぎる

Domoでチーフオペレーティングオフィサー兼チーフアナリティクスオフィサーを務めるマット・ベルキン氏
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 なぜだろう? 私なりに考えると、いくつかの原因が思い当たる。まずは「意思決定者にとってデータがあまりに遠い」という問題だ。社内の複数のシステムからデータを寄せ集めて地域別の傾向を把握したいといったアドホックなニーズはよくあること。このような場面では、IT部門がデータセットをまとめたり、経営企画部門が一次集計したりと、幾つものステップを踏むのが一般的な姿で決してすんなりとはいかない。すぐそこにあると思っているデータになかなか手が届かない。データを一番欲している人が、データから一番遠い場所にいるのが多くの企業の現実だ。

 この構図はスピードの観点でも問題を生む。様々な企業の経営幹部に会う度に「貴社では、少しばかり複雑な条件でデータをリクエストすると、手元に届くまでにどのぐらいの時間を要するか」という質問を投げかけている。即日という回答は希で、数日はおろか、数週間かかるといった声も少なくない。時々刻々と競争環境が変化するこの時代にはナンセンスな話である。

 データは鮮度が命であると同時に“客観性”もまた重要な要素だ。例えば、議論の場に提出されるデータ資料。それがまとめられるまでの間、幾人かの担当者が前処理やサマライズをする中で、もしかすると思い込みや都合で当人の主観が紛れ込んでいるかもしれない。ゆがんだデータからはゆがんだ意思決定しかできないのは自明だ。

 モビリティも軽視できない。重要な意思決定を任されている人ほど忙しいのは世の常だ。彼ら彼女らは、スケジュールの合間の寸暇に手元のスマホでKPIを確認し、次の行動を指示したり、他のキーパーソンと相談したりといったことができる環境を望んでいる。しかし、モバイル対応が後手に回り機動力の足かせとなっているケースがそこかしこにある。

 話をまとめると、ありそうで無かったのが「意思決定者が、求めるデータに自ら直接かつリアルタイムにアクセスし、可視化や議論ができるプラットフォーム」。ここに着目して我々が市場に投入したのが「Domo」である。離ればなれにあった意思決定者とデータを結び付け、その後に幸せなストーリーを紡ぐための仕掛けである。

 ETLやクレンジングなどを含め複数のソースを対象にデータを統合する機能、直感的なインフォグラフィクスとして気付きを与える機能、関係者がデータを共有しながら議論や合意形成を進めるコラボレーション機能…。“データドリブン”な経営を推し進めるのに不可欠な機能を取り揃え、クラウドベースで提供している。もちろんモバイル端末でも使える。すべて「意思決定者」を起点に設計しているのが特徴だ。

創業者の苦々しい経験が製品の母体になっている

 Domoの創業者でCEO兼会長を務めるジャシュ・ジェイムズ(Josh James)は、Omniture(注:Web解析ソリューションを手掛け、後にAdobe Systemsが買収)の創業メンバーの一人で2006~08年には同社CEOのポジションにあった。その時、「意思決定の材料となるデータがすぐに手に入らない」という現実に愕然とすると共に、もし理想的なプラットフォームがあれば似たような境遇の経営者は飛び付くだろうとの想いを強くした。市場を探せどもジャストフィットするものが見つからない。ならば自ら作ろうと思い立ち、Domoを開発して当社を起業した経緯がある。

 ビジネスを加速させるプラットフォームを標榜しているDomoだが、BIのカテゴリーで語られることも多く、セルフサービス型のビジュアライゼーションツールと同列で比較されることも間々ある。我々はそうしたフロントエンドのツールと競ったりリプレースしたりすることを本懐とはしていない。それらと共存する形も含め、データ活用高度化の領域に企業がこれまで続けてきた投資をムダにすることなく、少しでも理想形に近づけることに軸足を置いている。

 あえて我々にとってのコンペティタを挙げるなら、他社製のツールではなく、いつまでも従来からのやり方を変えようとしない「企業の保守的姿勢」と言うこともできるだろう。Domoを評価してくれても、クラウド活用に及び腰だったり、データは社内でがっちりハンドリングするルールを敷いていたりで、商談が前進しないといった例がまだ少なからずある。先駆的事例を積極的に紹介しつつ、デジタル時代こその“攻めのマインドセット”を啓蒙していかなければならない。

オンラインコミュニティやAppstoreを展開

 我々にとっては企業に導入を図ることではなく、その先、ビジネスの現場に定着し、使いこなしの成熟度が上がって「成長」に寄与することがゴールだ。日本には2011年から拠点を構え、コンサルティングを担うメンバーも布陣して様々な相談に乗る体制を整えている。もちろん、当社だけでできることは限られるので、Domo上にエコシステムを形成する取り組みにも注力する。例として挙げられるのが「Dojo」と「Appstore」だ。

 Dojoはユーザー参加型のオンラインコミュニティ。Domoの効果を上げるためのノウハウや、何かの壁に直面した時の解決策など、ユーザーがベストプラクティスを持ち寄って共有する場である。グローバル展開する大手企業からディスラプターと呼ばれるスタートアップ企業までメンバーの顔ぶれは多彩だ。実務で使いこなす同志が互いに刺激し合うと共に、当社へ機能の強化や拡充をリクエストする場としても活用してほしい。

 一方のAppstoreは、Domoの利用環境をさらに業務にフィットさせるために、当社あるいはパートナーが提供するアドオンソフトのマーケットという位置付けだ。業種や業界、あるいはユースケースなどで目的のものを探し出し、もし気になるものがあれば手軽な手続きでトライアルし導入を図れる。すでに1000本以上のアプリが登録されており、今後も続々と増えていく。

 IT分野の製品やサービスは、とかく実装している機能で比較されがちだ。しかし、一番大事なのは、そのソリューションが企業のどんな“ペイン”を取り除くために作られたのかという根本の発想にほかならない。様々なニーズに応えるために“枝葉”(=細かい機能)を拡げることも必要だが、何よりも大事なのは“幹”を太くしていくこと。DojoもAppstoreも、その考えの延長線上にあるものだ。

 当社はこれからも常に意思決定者に寄り添った開発を心がけていく。それはCクラスの経営者や事業部門の責任者など、ごく一部の層を対象としているという意味ではない。その会社のビジネスに関わる従業員一人ひとりが意思決定者であり、その立場ごとにあるデータの問題を解決していくということだ。

 「Domo」というネーミングは、実は日本の挨拶「どうも(ありがとう)」に由来している。Domoの活用でユーザーから「よかったよ、役に立ったよ。Thank you」との言葉を頂くことが我々の夢。先に紹介した「Dojo」も道場の意味そのもので、武道の稽古で切磋琢磨する様子を表している。そんなゆかりのある日本市場で、一社でも多くの企業を支援することができれば幸いである。(談)
 

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