NECは2018年6月29日、ラックの排熱を気化熱で冷やす「相変化冷却システム」を高度化する技術として、夏場の高気温環境でも使えるように、気化した冷媒を圧縮して高温化して放熱する技術を開発したと発表した。2020年度までに製品化を目指す。
NECは2014年12月から、ラックの排熱を気化熱で冷やす「相変化冷却システム」を提供している。ラック背面に取り付けて使う冷却ユニットであり、ラックマウント機器からの排気が相変化冷却ユニットを通過する際に、冷却装置内にある冷媒が気化し、この時の気化熱で熱を奪う。気化した冷媒は、配管を通って室外へ移動し、室外で熱を放出して液化し、重力で室内へ戻る。
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今回NECは、相変化冷却システムを高度化し、夏場の高気温環境でも外気で冷やせるようにする技術を開発した。ラックの排熱を奪って気化した冷媒を、圧縮することによって高温化する。これにより夏場の高気温環境でも排熱できるようになる。冷媒の温度が下がった後は、圧を下げて体積を膨張させて温度を下げて液化する。
検証も実施した。インド南部のデータセンターにおいて、通常のデータセンターのラックと比べて2倍の発熱量となる、7.5kワットのラックで実証実験を行った。今回の技術を使うことによって、外気温が摂氏35度の高温下で、既設の空調機と比べて、空調電力を半減させ、ラックの総電力量を20%削減したという。
開発した技術のポイントの1つは、体積流量が大きくなる低圧冷媒を円滑に流し、かつ均一に分配するための流路技術である。冷媒をスムーズに流す配管設計が難しい中で、低圧冷媒の物理現象を把握し、円滑に流せる緻密な流路技術を開発したという。また、配管が太くなって設備工事が困難になる問題や、圧縮機が大規模化する問題に対しては、複数本の細い配管(細径銅管)を適用し、長さを変えた流量の調節などにより、冷媒を均一に分配させる流路技術を開発し、システム全体の小型化を実現したという。