[イベントレポート]

“AIの民主化”を促すグーグルのML/DLサービス群と、それを支える最先端データセンター

クラウド&データセンターコンファレンス2018 Summer 特別講演レポート

2018年9月18日(火)柏木 恵子

グーグルにとってマシンラーニング(機械学習)やディープラーニング(深層学習)はもはや前提の技術だという。同社は「TensorFlow」や「Cloud ML APIs」「Cloud AutoML」といったサービスをクラウドで提供し、AIの適用範囲の拡大と“民主化”を推し進めている。2018年7月3日に開催されたクラウド&データセンターコンファレンス2018 Summer(主催:インプレス)の特別講演に登壇したGCPデベロッパーアドボケイトの佐藤一憲氏が、有名な「TensorFlowによるキュウリの仕分け」や不良品検出などの事例を交え、「現場で使えるAI/ML/DL」の広がりを示した。

マシンラーニングは万能ではなく、期待値制御が重要

 クラウド&データセンターコンファレンス2018 Summer(関連記事:オープニング基調講演)の特別講演に登壇したグーグル GCPデベロッパーアドボケイト、佐藤一憲氏(写真1)は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、マシンラーニング、ディープラーニングといった昨今バズワードとなっている言葉の定義や背景の説明から入った。

写真1:グーグル Google Cloud Platform デベロッパーアドボケイト 佐藤一憲氏

 AIの領域は広く、グーグルが取り組んでいるのはいわゆる「弱いAI(用途特化型AI)」である。「既存のITシステムは論理的な推論を行うため、例えば画像のような“ふわっとした情報”を処理するのは非常に難しかった。当社はそれをマシンラーニングによって可能にすることに取り組んでいる」(佐藤氏)

 マシンラーニングでは、大量のデータを名称どおり学習することで、コンピュータが統計的な判断を行えるようにする。この手法自体はいわゆる回帰分析でExcelを使っても行えるが、そこにブレークスルーをもたらしているのがニューラルネットワークの活用だ。1940年代に発明された脳のニューロンを模した回路だが、昨今の膨大なコンピューティングパワーを使うと驚くべき振る舞いを見せることが2012年頃に発見された。

 「ただし、マシンラーニングは万能というわけではなく、判定精度が100%になることはない」と佐藤氏。この技術をビジネスで活用する際には、「どの程度の精度なら許容範囲か」「人間がやるより顕著に生産性が高いか」「マシンラーニングが間違ったときに、人間あるいはシステムがどうリカバリーするか」といったことを検討する必要があると説明、「期待値制御が重要」(同氏)だとした。

ニューラルネットワークとは「試行錯誤する関数」

 また、佐藤氏は「ニューラルネットワークとは試行錯誤する関数である」と述べ、次のように説明した。「関数ということは、入力に対して出力があるだけで、意思や常識を持つわけではない。初めのうちは判断を間違うが、学習を続けるうちに精度が上がってくる。こうした試行錯誤をすることになる」

 その例を示すのが図1のスライドだ。2色の渦巻き模様が描かれた面に新たな点が打たれたとき、どちらの色になるべきかというものだ。人間ならば直感的に判断できるが、コンピュータだと、初めは「上の方ならオレンジで下の方ならブルー」のような大雑把な判断しかできない。これが学習を続けると正解するようになっていくわけだ。

図1:正解を教え続けることで判断の精度が上がる(出典:グーグル)
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 この例の場合、人間がプログラムコードで、ここだったらブルー、ここだったらオレンジと書いたほうが断然速い。「でも、それをあえてやらずに、コンピュータに試行錯誤させて、探させる。それによって今のブレークスルーが実現している。なぜなら、人間がプログラムコードを書いたら、人間の想定を超えることはできないからだ」(佐藤氏)

 図1ではオレンジとブルーの2種類のデータを用いているが、これを2次元のデータと呼ぶ。「マシンラーニングの面白いところは、2次元でできたことを、n次元、つまりどれだけ多次元のデータでも扱えることである」と佐藤氏。それによって、人間では判別できないほどの詳しい判断が可能になっていく。「単純なニューラルネットワークも階層を重ねると驚くべきことが起きる。これがいわゆるディープニューラルネットワーク、ディープラーニングと呼ばれるものだ」(佐藤氏)

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