「AI」というワードは、頻繁にニュースで取り上げられるほと市民権を得ている。その一方で、一般の人には縁がない特別な存在でもある。かつての「コンピューター」がそうであったように。実際、普通のビジネスパーソンがビジネスの中でAIを使いこなしている姿は想像できないのが現状だろう。新たなAIの価値創造を目指すベンチャー企業のaiforceが提供するデータ分析自動化ツール「AMATERAS」は、ExcelやセルフサービスBIツールのように、「ビジネスパーソンが日常的に使えるセルフサービスAI」を目指している。
コンサルティングファームで企業のAI導入を支援してきた経験を持つaiforceのCEO、西川智章氏によると、AI(主にマシンラーニング)を活用している企業の各案件を精査すると、「データサイエンティストやAIエンジニアなど専門家の力が絶対に必要な難易度の高い案件はごく一部に限られており、8割はツールによる自動化が可能なレベル」だという。その8割に焦点を当てたのがAMATERASだ。
市場にローンチしたのが2018年10月12日と、登場間もない製品だが、すでにAI人材不足に悩む、あるいはAIのスモールスタートを希望する一部のユーザー企業やITベンダーから高い関心を持って迎えられている。
従来、データサイエンティストが試行錯誤しながら数カ月かかって数十の予測モデルを作成するところ、AMATERASは短時間で1000モデルを自動作成、その中から精度の高いモデルのみをピックアップして提示する。一般のビジネスユーザーが利用するための「ユーザーモード」の場合、数クリックで予測モデルを作成できる。細かいパラメーターの設定が可能な、プロユースの「データサイエンティストモード」も提供される予定だ。
1000のモデルを瞬時に自動生成
例えば、証券会社などの為替データをベースにFXを予測するモデルをAMATERASで作成する場合、まず予測対象を数値予測や分類から選択するだけで、バックエンドでハイパーパラメーターが回って約1000のモデルを自動作成する。その中から予測精度のもっとも高いものや相関が高いものをピックアップしてグラフ表示する。
ある総合商社ではトレーディング部門でAMATERASを使い、従来通り人が予測したものと比較したレポートを上げているという。「今日はAIがこんな結果を出した」と部内で話題になるほど、高い精度を上げているそうだ。
分析の種類としては通常のマシンラーニングだけでなくディープラーニングや、Kaggleで多くの研究者に使われているアルゴリズムのXGBoostといった珍しいものまで用意されている。
AMATERASの使い方のひとつとして西川氏が期待するのが、「ユーザーのデータリテラシーを高める」ことだという。生の数値は、必ずしもすべての数値が法則に則っているわけではなく、例外値が混在していることも珍しくない。例外値を入れたままモデルを作成すると精度が落ちる。そこでデータサイエンティストは膨大な時間をかけてデータクレンジングを行っているのだが、普通のオフィスにデータサイエンティストはいない。
AMATERASでは、とりあえず玉石混合のデータを可視化してみる。グラフ化することで明らかに相関の低いものが見えてくるので、それを削って再度モデルを作成すると、より精度の高いものが出来上がる。「この一連のプロセスをユーザー自身が身に付けることで、より有効にAIを使いこなせるようになる」
ビジネスユーザーが「とりあえず可視化」を行うためには、インターフェースやユーザビリティが重要となってくる。「通常のビジネスで使用する分には、可視化するだけである程度の結論が得られる」こともあり、AMATERASでは可視化に至るプロセスの簡易化や見やすさを大変重要視している。
UI開発チームによると、UX(ユーザーエクスペリエンス)の目標値を、「最大3クリック」に置いているという。つまり、3クリックで必要な結果にたどりつくことを理想としてUI開発を進めている。かつて、TableauなどのセルフBIベンダーが、使い易さやデザインセンスで「BIの民主化」を実現したように、手軽で使い易い「セルフAI」として普及させようとしているのがAMATERASだ。
AIツールとしては、DataRobotが先行して市場に登場している。「AIの民主化」を謳った製品だが、データサイエンティストや、ある程度リテラシーの期待できるビジネスアナリストなどが主な対象で、「直感的」というよりは教育を受けたうえでAIに費やすリソースや時間を効率化し、高レベルな成果を出すのが目的となっている。
AMATERASは、Excelのようにビジネスパーソンがだれでも使えるようなツールを目指している。西川氏は「競合はDataRobotとTableau」と語っており、AIツールでありながら、可視化ツールとしても手軽に利用できるようになることを理想としている。そのために、機能拡張を続けていく予定だ。
バージョン3.0でモックアップ機能を搭載予定
開発ロードマップによると、10月発売のバージョン1.0はユーザーモードで、データロード/複数データ結合、統計量/ヒストグラム作成、相関分析/モデル構築、予測結果シミュレーションという4つの機能が搭載されている。
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