[事例ニュース]

東京オリンピック体操競技の採点をディープラーニングで支援─国際体操連盟

富士通が開発したシステムを採用、2024年には体操全種目に利用拡大へ

2018年11月21日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

国際体操連盟は2018年11月20日、富士通が開発する体操競技の採点支援システムの正式採用を決定したと発表した。例えば、2020年東京オリンピックにおける男子体操の鞍馬、吊り輪、跳馬、女子の跳馬、平均台という計5種目の採点を、3Dレーザーセンサーとディープラーニングなどを駆使して支援する。2024年には体操の床や平均台などを含めた全種目に利用を拡大する計画だ。

 体操競技の採点システムというだけなら本誌読者にはあまり関係ない話だ。だが、システムのベースには人の動きや動作を精緻に可視化し、理想とのずれを判断するAIなどの技術がある。ほかのスポーツはもちろん、ヘルスケアなど応用範囲は意外に広い点で注目する必要がありそうだ。

写真1:発表会では国際体操連盟会長の渡辺守成氏が採点支援システムの説明を行った

 近年の体操競技は、わずか0.5秒の間に3回転半のひねりが入るなど高難度化しており、しかもそれが連続する。見る角度によっては動きが見えにくい場合もあるなど、審判の負担が増している。そのため“審判の審判”がいるほどで、国際体操連盟会長の渡辺守成氏(写真1)によると「出場選手180人に対し、審判が100人」という状況が生まれている。そこで同連盟は富士通と2017年10月に採点支援システムに関する業務提携を締結。審判の負担を下げるためのシステム開発を進めてきた。

3Dレーザーセンサーとディープラーニングによる採点支援

 採点支援システムの仕組みはこうだ(図1)。まず3Dレーザーセンサーという装置を演技を取り囲むように数台配置。1台あたり毎秒200万回、目に見えない点をレーザーを照射し、立体的に動作をセンシングし、「多視点深度画像」を作成する。これにディープラーニング(深層学習)をかけて3Dの関節座標にして姿勢を把握する。ただし、これだけだと実際の姿勢や動きとズレがあるので、さらに評価関数に基づいて骨格の最適位置を探索し、最終的に姿勢を認識するという。

図1:3Dレーザーセンサーで体操の演技を認識する
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 そうして認識した姿勢(動き)を、膨大なデータを集めて別途構築した「技のデータベース」とマッチングさせて、どの技かを認識。特徴量を算出したり、技の採点辞書とつきあわせて、演技の価値点を示す「Dスコア」、演技の美しさや正確さを表す「Eスコア」を算出する(図2)。審判は自分の目で見た演技に加えて、この点数や採点支援システムが出力する骨格の動きを示す画像などを参考に、採点を行う。

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