[インタビュー]
スマホでも利用できるデジタル署名の国際標準規格―コンソーシアム設立し実現へ
2018年12月17日(月)杉田 悟(IT Leaders編集部)
オフィスのデジタル化が進行すると、その成果のひとつとして実現されるのがオフィスにおける「ペーパーレス化」だろう。2000年代初頭から語られてきたキーワードではあるが、実際にはいくつもの壁が存在し、なかなか実現に至らなかった。壁のひとつである印鑑文化、海外ではサイン文化だが、これを電子化/デジタル化しようという動きが、世界的な潮流となりつつあるようだ。電子/デジタル署名の普及に向けた活動を行っている米アドビシステムズ ストラテジック・デベロップメント・ディレクターのダン・ピュータボー(Dan Puterbaugh)氏が、米国政府におけるデジタル化への取組の現状と、欧米における電子/デジタル署名の動向、標準化団体について語った。
「米国はデジタル化に積極的」は"神話"
まず、始めに皆さんの思い込みを1つ、払拭させていただきたい。「米国はデジタル化に非常に先進的であり、皆が積極的に取り組んでいる」というのは「神話」にすぎないということです。
――神話にすぎないとはどういうことでしょうか。
「皆が」というのが、事実でないということです。もちろん、先進的な企業はたくさんありますが、中には業界ぐるみでまったく消極的なところもあります。その代表的な業界の1つが公共分野、米国政府なのです。米国政府には、他の国々と同様に何百もの省庁、機関が存在しています。それだけ巨大なインフラを抱えているということになります。そのプロセスをデジタル化したあかつきに得られるメリットが非常に大きいものであることは、容易に想像できることです。にも係わらず積極的にデジタル化を進めていない。それは、米国の政府および各省は非常に保守的で、変化を嫌うからです。
――前オバマ政権中には、いち早く政府専用のクラウドサービスを開始するなど、先進的なイメージが強いのですが。
2012年と2016年に、政府のIT化、デジタル化を推進するためのいくつかの勧告と政策提言が発表されました。これをもって先進的と見られがちですが、実際にはあまり効果が得られていません。というのも、その勧告、提言を実際に実行するかどうかは、あくまでも各省庁の努力目標として設定されていたため、"笛吹けど踊らず"状態になってしまったからです。もしかしたら他の国でも同じかもしれませんが、「絶対に変わらなければならない」と言われるまでは、「絶対に変わらない」のが米国の役人なのです。
――政府がデジタル化に積極的でないことを表す具体的な例はありますか。
いくつかの調査で明らかになっています。2017年に500の政府機関のWebサイトを対象にした調査では、重要な項目で不合格になったWebサイトは91%に上りました。別の調査ではデジタルエクスペリエンスの取り組み状況を業界別に評価していますが、連邦政府の業界別ランキングは21業界中20位という低さでした。
欧米のデジタル化推進法案
――その状況に対して、米国政府は何か手を打っているのでしょうか。
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