[インタビュー]
「AIへの取り組みは自然体で、まず身近な分野から」─専門家が"PoC疲れ"の日本企業に助言
2019年11月18日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)
国内でも関心が高まる一方のAIだが、“PoC疲れ”の話もよく聞く。海外企業の取り組みはどんな状況なのか。うまく成果を上げるにはどんなポイントに注意すべきか。米ガートナーにおいてさまざまな企業のAIに関する取り組みを調査し、CIOたちにアドバイスしているウィット・アンドリュース氏(Whit Andrews、同社ディステングイッシュト バイスプレジデント アナリスト)にポイントを尋ねてみた。
「米国企業ではPoCを実施していない」
──世界各地における企業のAI利活用は、どんな状況なのでしょう。
我々の調査では5社に1社が何らかのかたちで実用化しています。何らかのトライアルをしている企業が残りの多くを占めますが、関心がない企業も10社に1社ほどあります(図1)。一方で今週、来日して企業のCIOの方々とお話ししました。そこから得たのは、世界的に見て日本企業は決して遅れていない、むしろ進んでいるという印象です。もちろん、私のような人間と会う意欲のある方々というバイアスがあることは考慮する必要がありますが。
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──もちろん一部の日本企業は進んでいるにせよ、実際にはPoC(概念実証)のレベルにとどまり、実用化に結びつかないという話もよく聞きます。この点、海外企業も同じでしょうか。
確かに昨日、日本の大手情報サービス企業の方と話した際に「PoCで終わってしまうケースが大半」という話を聞きました。なるほど、日本はPoCが多いのですね。でも米国ではPoCを実施していないのですよ。これは参考にしていただける話だと思いますが、少し詳しく説明すると、AIへの取り組みは日本でも米国でも必要ですから、多くがスタートさせています。
その際、米国企業は、すでに使っているアプリケーションの機能を強化する方向にAIを生かそうとします。CRMにおける顧客分析やサプライチェーンにおける需要予測、小売りにおける在庫管理などがその例です。アプリケーションベンダーが提供するAI機能をそのまま利用し、すでに掲げる目的を達成するように取り組みます。
──AIといっても、少し高度なデータ分析ツールに過ぎず、できる範囲で使えばよいとったスタンスですか?
そのとおりです。これに対して、PoCを実施するのはAIを使って新しいこと、できなかったことをやろうとしているからであるように見えます。それが日本企業の取り組みであり、結果、PoCで終わるケースも相対的に多いのでしょう。でも、それはどちらかがよくてどちらかが悪いという話ではありません。経営者や社員、顧客をよりハッピーにする方向に行けば問題ありません。そこに行く道が複数あるだけのことです(図2)。
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