[事例ニュース]
東京海上日動、天候データから台風の被害レベルを予測するAIモデルを開発
2020年4月28日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)
東京海上日動火災保険(東京海上日動)は2020年4月28日、強風が発生したエリアにおける被害レベルを予測するAIモデル「風災被害AI予測モデル」を開発したと発表した。東京海上日動がこれまでの災害対応を通じて得たデータ、The Weather Company(TWC)が持つ天候データ、日本IBMが持つデータ分析の知見、――を組み合わせて開発した。
東京海上日動と日本IBMは、強風が発生したエリアにおける被害レベルを予測するAIモデル「風災被害AI予測モデル」を共同で開発した。台風などの自然災害が発生した場合に、いち早く保険金を届ける仕組みとして開発した。特に、大規模な台風が発生した際は、被害が広範囲に及ぶため、より迅速な被害状況の確認と保険金支払いに向けた体制整備が必要になる。
風災被害AI予測モデルの実証実験を実施したところ、特定の台風において、地域レベルでの支払件数を高い精度で予測できた。2018年に発生した台風21号のケースでは、特に被害の大きかった大阪府での実際の保険金支払い件数と、予測した支払い件数が、誤差率5%以内の確率で一致した。
風災被害AI予測モデルは、東京海上日動が過去の事故対応によって集積したデータと、TWCが提供する気象データを組み合わせ、マシンラーニング(機械学習)を実施して作成した。強風エリアにおける被害レベル(被害の有無、被害件数、保険金支払見込額)を早期に予測するとしている。
TWCは、2016年から米IBMのグループ企業となった、気象情報サービス会社である。日本IBM内に「アジア太平洋気象予報センター」を設置しており、気象予報士が24時間365日常駐し、企業向けの気象データをクラウドサービスで提供している。
TWCは、AIを活用した予報データを、1キロメートルメッシュという狭い範囲で、なおかつ最大15日先までのデータを、リアルタイム(1時間単位)で収集する。気温、降水量、風向・風速、気圧といった一般的な項目のほか、直達日射量、体感温度、視程、空気密度などの予報、現況、過去データをAPIで提供している。
東京海上日動と日本IBMは今後、より細かい粒度のオープンデータや多くの台風データを学習させ、AIモデルの精度をさらに高めていく予定である。今回の実証では、地域単位での保険金支払い件数に関する予測を実施したが、今後は、個別契約単位での被害額の予測およびAIモデルの汎用性ついて検証を進めていく。顧客への能動的な保険金請求の案内など、より迅速な保険金支払いの仕組みを検討していく。