[事例ニュース]
キユーピー、惣菜工場における製造ラインのシフト最適化に量子コンピュータを活用
2020年10月9日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)
食品メーカーのキユーピーは、惣菜工場のシフト計画を量子コンピュータ技術(量子アニーリング)で最適化するプロジェクトを開始した。実証実験では、熟練のシフト作成者が30分かけて作成したシフト表と比べて遜色のない結果を1秒で作成できた。量子コンピュータ関連事業を提供するグルーヴノーツが2020年10月9日に発表した。
キユーピーでは、惣菜市場の拡大にあわせて「サラダ・惣菜事業」の売上が伸びている。一方、惣菜には、見た目や重量など厳密な盛り付け基準があるため、多くの従業員がベルトコンベアを囲んで24時間交代制で働いている。人手を増やさずに生産性を高めるためには、人とロボットの役割分担を踏まえた業務オペレーションと、シフト体制の再設計が不可欠。こうした背景から、より高度なシフト計画を立てるため、量子コンピュータ技術を導入するプロジェクトを開始した。
シフト計画の作成には、本人の労働条件や休暇希望、製造ラインごとに求められる人数・スキル要件、勤務間隔、人件費、人と人の相性など、さまざまな条件を考慮する必要がある。これらの組み合わせパターンの中から最適な答えを解く問題を「組み合わせ最適化問題」と呼ぶ。同問題を解決する技術はイジングマシンと呼ばれ、量子アニーリングなどが用いられる。
キューピーは今回、グルーヴノーツが提供している量子アニーリングのクラウドサービス「MAGELLAN BLOCKS」を導入し、惣菜工場の製造ラインのシフトを最適化プロジェクトを開始した。
実証実験ではシフト表の作成が30分から1秒に短縮
これまでキユーピーとグルーヴノーツが行った実証実験では、MAGELLAN BLOCKSのイジングモデルでシフトを作成したところ、熟練のシフト作成者が30分かけて作成したシフト表と比べて遜色のない結果を1秒で示すことができた。
イジングモデルを使えば、従来であれば複雑すぎて考慮しきれなかった条件や、従業員が求める新しい働き方の要件、新型コロナウイルス感染症対策として密集を回避した配置基準などを加味したシフトの作成も可能になる。
AIによる需要予測を組み合わせる計画もある(図1)。これにより、日々の需要量に応じた製造計画の策定、製造順序の最適化、シフト最適化、番重(食品用コンテナ)の積み付けの最適化、物流の最適化など、工場全体の最適生産体制の構築に向けた支援が可能になる。
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なお、製造ラインにおいて人とロボットが共に働いた場合のオペレーションをシミュレーションした結果、ロボットは高性能であるよりも、人間の動きと調和したときに時間あたりの生産量が最大化する、としている。