矢野経済研究所は2020年11月9日、2020年度の国内民間企業のIT投資実態と今後の動向についての調査結果を発表した。2021年度の国内民間企業のIT市場規模(ハードウェア、ソフトウェア、サービス含む)は、前年度比4.3%減の12兆3500億円になると予測している。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況下でも、働き方改革に向けたIT投資は増加する見通しだとしている。
矢野経済研究所は、2020年7月~2020年10月にかけて、国内の民間企業など565件を対象に、IT投資の実態と今後の動向を調査した。調査方法は記名式郵送アンケートおよび文献調査を併用した。
2020年度は、新型コロナウイルスの影響を受け、「IT投資計画の先送り/見送り」などマイナスの要因が生じている。一方、テレワーク環境の整備に向けた設備投資が好調であることや、大企業を中心に「大規模システムの刷新/公開」が概ね予定通りに実行されるなどプラスの要因もある。このため、2020年度の市場規模は前年度比横ばい程度になると予測している。
新型コロナウイルスの影響を受けたIT投資の方向性の変化についてのアンケート調査では、国内の民間企業など512件の回答を得た。各設問項目について、「大きく増加」、「やや増加」、「変わらない」、「やや減少」、「大きく減少」のなかから必ず1つ選択する方式で行った。約6割の企業が「働き方改革」へのIT投資を増加させると回答した(図1)。
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背景として矢野経済研究所は、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けてテレワークの導入が急速に進み、ノートPCやWeb会議システムなどに対する需要が急拡大した動きを指摘する。同社は、働く場所や働き方が多様化するなかで、今後も働き方改革に向けたIT投資が進むと予測している。
2020年度以降における国内民間企業のIT市場規模は、2020年度が前年度比0.1%増の12兆9000億円、2021年度は同4.3%減の12兆3500億円、2022年度は同0.4%増の12兆4000億円になると矢野経済研究所は予測している。
2021年度は、新型コロナウイルスの影響による業績不振の影響を受ける形で、「不要不急のシステム・サービスの先送り/見送り」など、企業のIT投資が縮小傾向になると見込まれる。市場規模は前年度比4.3%減になると予測している。
2022年度以降は、世界経済が立ち直り始めることなどを背景に、「5Gの本格普及」が進むことや、「働き方改革の推進」、「データを活用した取り組みの進展によるAI/oTなどの普及」、さらに、これらを受けた「セキュリティ対策の必要性が高まり」などから、市場は緩やかながらも成長していく見通しだとしている。