[技術解説]

操作はLINEから、心地よいUI/UXを追求したワークスペースサービス─TiNK Desk

Ruby開発最前線─Ruby bizグランプリ2020大賞サービス(2)

2021年4月6日(火)Ruby bizグランプリ実行委員会

日本発のオープンソースのプログラミング言語「Ruby」と、その開発フレームワーク「Ruby on Rails」。これらを用いて開発されたアプリケーションやサービスは数多あるが、その中から、特にすぐれたものを表彰するのが年次アワードプログラム「Ruby bizグランプリ」だ。本稿では同グランプリ2020の大賞に選ばれた2つのサービスのうち、「TiNK Desk」(開発:tsumug)を紹介する。

“本拠地”島根県で毎年開催しているRubyビジネス事例アワード

 Rubyは、生産性を高めるフレームワークRuby on Railsと共に、世界の多くの開発現場で使われているオープンソースのプログラミング言語である。その普及を促進するために2015年に始まったのが「Ruby bizグランプリ」という年次アワードプログラムだ。Rubyの開発者まつもとゆきひろ氏の活動拠点である島根県が中心になって組織したRuby bizグランプリ実行委員会が主催し、グランプリの審査委員長をまつもと氏自身が務めている。

 前回はメディカルノートが開発・運営する医療・ヘルスケアプラットフォーム「Medical Note」を紹介した(関連記事APIを駆使して“医師と患者をつなぐ”プラットフォームを実現─「Medical Note」)。今回紹介するもう1つの大賞は、tsumugが開発・運営する、空室を利用したワークスペース/シェアオフィスサービス「TiNK Desk」である。


Ruby bizグランプリ2020大賞
TiNK Desk  https://deskservice.tinklock.com/
開発概要:ワークスペース/シェアオフィスサービス
開発企業:tsumug
Rubyを採用した理由:
・ライブラリやサポートツールが豊富なこと
・日本語の情報が豊富で使いこなしのノウハウが広く共有されていること
Ruby採用効果:
・開発スピード/効率が向上したこと
・社内SDKを構築して他のサービスとコード共有したことやエンジニアの採用がしやすくなったことも開発スピード/効率向上に拍車をかけた

「空間マネジメントのプラットフォームを普及させたい」

 tsumug(つむぐ)は、「それぞれの心地よい居場所で世界を埋め尽くす」というビジョンの下、電子錠や空間マネジメントの分野でサービスを開発・提供する企業だ。本社は福岡県福岡市で、東京都渋谷区の「東京BASE」オフィスと緊密なコミュニケーションをとりながら事業を展開している。

 Ruby bizグランプリ2020大賞に選ばれた「TiNK Desk」は、TiNKシリーズの1つとして開発されたサービスで、他に「TiNK Office」というサービスもある。TiNKシリーズでは、空間を借りたい人と、所有する空間の借り手を必要としているオーナーをつなぐ、空間を無人管理するためのサービスを展開している。TiNK Deskはワークスペース/シェアオフィスサービスとしての利用を、TiNK Officeは契約企業専用オフィスとしての利用を想定して開発された。

写真1:tsumug ソフトウェアエンジニアの池澤あやか氏

 TiNK Desk自体の紹介をする前に、そのコアとなる基盤、プラットフォームについて確認しておきたい。

 tsumugの代表的なサービスとして、2017年にリリースされたLTE通信ベースの電子錠「コネクティッド・ロック TiNKシリーズ」がある。tsumugのソフトウェアエンジニアである池澤あやか氏(写真1)に、TiNK Deskもコネクティッド・ロックを活用したサービスとして作られたのかを尋ねたところ、初めに作りたかったのは空間マネジメント分野のサービスのほうだったという。空間マネジメントのサービスを考えたとき、「まず必要なのは鍵ではないか?」という仮説の下、コネクティッド・ロックの開発に取り組んだわけだ。

 つまり、同社のフォーカスが電子錠からサービスへと変わっていったようにも見えるが、まずはコネクティッド・ロックデバイスを開発し、その開発で培った入退室管理・制御のノウハウを活用してワークスペース/シェアオフィスサービスを開発したという順番である。

 tsumugは、鍵がインターネットにつながることで、空間をさまざまな人が柔軟に使うことができるようになり、空間マネジメントの世界が変わると考えている。同社が描くその構想の基盤になっているのが、コネクティッド・ロックを用いるサービス向けのプラットフォーム「SharingKeyシステム」である。TiNK Desk/TiNK Officeとも、このSharingKeyシステム上で作られている(図1)。

図1:TiNKシリーズの全体図(出典:tsumug)
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 SharingKeyシステムは、APIを介してデータのやりとりをする。そのため、利用するサービス側の開発言語は問わない。このAPIの仕組みを生かして、入退室管理、アクセス権の詳細設定、空間内のセンサーとの連動機能などを各サービスに適用している。

 tsumugは「人と空間のインターネット」のプラットフォームを目指しており、他社にもSharingKeyを利用したサービスを作ってもらいたい考えだ。よって、TiNK DeskやTiNK Officeは、SharingKeyのサービス事例としての役割も兼ねている。

●Next:他の言語からRubyに切り替えた理由と効果

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