京都薬科大学の赤路教授らの研究グループは2021年9月6日、AI技術を取り入れた医薬品探索研究法を開発し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のリード化合物を発見したと発表した。AI技術は、Preferred Networks(PFN)との共同研究で開発したものであり、医薬品開発の初期工程を高速化する。
京都薬科大学は、AI創薬技術を持つPreferred Networks(PFN)と共同で、AI技術を取り入れた医薬品探索研究法を開発した。同技術を用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のリード化合物を発見した(図1)。
PFNのスーパーコンピュータ「MN-2」が提案した複数の化合物のうち、13化合物を京都薬科大学で合成し、活性試験を実施した(関連記事:PFN、3機種目のディープラーニング用スパコンを2019年7月に稼働、合計で200PFLOPSに)。この結果、7化合物で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖に必須の酵素(メインプロテアーゼ、Mpro)の活性を阻害する作用を確認した。
今回発見したリード化合物を治療薬としていくためには、今後も多くの研究を積み重ねていく必要がある。一方で、今回の研究結果は、PFNのAI創薬技術が現実世界の創薬研究に応用できることを示している、とPFNはアピールする。
PFNのAI技術で医薬品開発の初期工程を高速化
PFNが開発したAI創薬技術では、研究者の知見に大きく依存してきた医薬品の探索研究に、ディープラーニング(深層学習)技術とスーパーコンピュータを投入する。種々の化合物生成モデルと、Optunaなどの最適化アルゴリズムを組み合わせる(関連記事:ディープラーニングのパラメータを自動調整するライブラリ「Optuna v2.0」、パラメータの重要度を定量評価─PFN)。これにより、候補物質の探索や分子設計などの医薬品開発工程を短縮する。さらに、人間が発想できない新しい分子構造を提案する。
これまでの赤路教授の研究により、ペプチド性化合物や非ペプチド化合物が重症呼吸器症候群(SARS)ウイルスのMproを阻害することが明らかになっている(図2)。今回の共同研究では、AIによる仮想空間で分子設計と分子モデリングを実施し、SARS-CoV-2のMproを阻害する、より単純かつ非ペプチド様の化合物の発見を目指した。
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