NTT、JR東日本、NTTファシリティーズ、NTTデータの4社は2021年11月1日、NTTが開発した「空調最適制御シナリオ算出技術」をJR新宿ミライナタワーのオフィスロビーに適用する共同実証を行ったと発表した。実証の結果、夏季におけるオフィスロビーの快適性を維持しつつ、消費エネルギー量を約50%削減できることを確認した。NTTファシリティーズとNTTデータが同サービスを実用化する検討を進める。
NTTが開発した「空調最適制御シナリオ算出技術」を、JR新宿ミライナタワー(東京都新宿区)のオフィスロビーに適用した。実証の結果、夏季のオフィスロビーの快適性を維持しつつ消費エネルギー量を約50%削減した(図1)。NTTファシリティーズとNTTデータが、同サービスの実用化を検討する。
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今回の実証で、算出した空調運転シナリオをオフィスロビーの空調運転に適用したところ、快適性の指標であるPMVを快適な範囲内に保ちつつ、空調機が用いる消費エネルギー量(冷水熱量)を、従来の同気候日における空調運転時と比べて約50%削減できることを確認した。
NTTによると、室内の快適性を予測するには従来、2カ月以上の測定データを必要としたという。これに対して今回実験した技術では最短3日間の測定データだけで快適性を予測することができる。
深層強化学習でフィードフォワード制御を実施
適用した技術の特徴は2つ。1つは、コンピュータ流体力学とマシンラーニング(機械学習)を組み合わせた最短3日間の計測から得た少量データだけで快適性を予測する点である。もう1つは、深層強化学習を用いることによって、空調が室内環境に影響を及ぼすまでの時間を考慮したフィードフォワード制御を行う点である(図2)。
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まず、来館者の数、外気温、空調運転状況、室内の温湿度のデータを用いて、機械学習とコンピュータ流体力学を組み合わせることで、快適性指標であるPMVを少量の計測データを基に予測する。次に、予測したPMVを基に空調運転設定を算出する、という処理を1日分繰り返しながら最適化する深層強化学習を用い、対象日の空調運転シナリオを算出する。
従来の方法では省エネルギーと快適性の両立が困難
NTTによると、従来、商業ビルやオフィスビルにおける通路やロビーなどの共用部の空調制御は、センサー信号に基づく制御(フィードバック型制御)や、ビル管理者の経験に基づいた制御が行われてきた。
「しかし、従来の技術では、空調の制御が室内環境に影響を及ぼすまでの時間を考慮することが難しい。また、時間遅れを考慮するためには、温湿度や人流といったデータを長期間計測し、分析する必要がある」(同社)。こうした経緯から、実際のビルにおいては、消費エネルギーを抑えつつ来館者や入居テナントにとって快適な環境を実現することは困難だったという。
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