キリンビールは2021年11月29日、ビール類の製造工程において、AIを活用して最適な仕込・酵母計画を自動で立案するシステムを開発したと発表した。同システムは、段階的な導入を経て、2021年10月時点で全9工場での試験運用を開始し、2022年1月から本格運用を開始する予定。試験運用を通じて熟練技術の伝承と、全9工場合計で年間1000時間以上の時間創出を見込んでいる。システムの投資額は約1億7000万円で、NTTデータがシステム構築を支援する。
キリンホールディングスの中核会社、キリンビール(本社:東京都中野区)は、ビール類の製造工程において、AIを活用して最適な仕込・酵母計画を自動で立案するシステムを開発した。2021年10月時点で、同社全9工場での試験運用を開始している。2022年1月から本格運用を開始する。導入の効果として、仕込・酵母計画における熟練技術の伝承と、全9工場合計で年間1000時間以上の時間創出を見込んでいる(図1)。
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対象となるのは、北海道千歳工場、仙台工場、取手工場、横浜工場、滋賀工場、名古屋工場、神戸工場、岡山工場、福岡工場の同社全9工場。2020年12月には、「濾過計画」をAIで自動化するシステムを全9工場で稼働済み。今回、濾過計画システムをベースに、仕込・酵母計画にもシステムを導入した。これにより今回、ビール類を醸造する計画業務のすべてをAIで自動化した。すでに自動化済みの濾過計画と、今回追加した仕込・酵母計画の合計で、年間4000時間以上の時間創出を見込む。
商品の製造計画は、本社と各工場が連携して立案している。キリンビールによると、製造計画の中でも仕込・酵母計画業務は、熟練者の知見に頼る複雑な作業であり、各種の条件を勘案しながら行うことから、作業に時間がかかり、技術伝承が難しいという(図2)。
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仕込・酵母計画システムの開発にあたっては、SIベンダーのNTTデータが支援する。各工場の熟練者にヒアリングを実施し、各種の制約を洗い出し、制約プログラミング技術(問題に対する制約条件を満たす答えを効率よく見つける技法)を活用して熟練者の知見を顕在化/標準化した。NTTデータは、同システムに関する業務要件およびシステム要件の整理、制約プログラミングエンジンの開発/チューニングなどを実施した。