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日立が「説明可能なAI」を強化、内容が複雑なブラックボックス型のAIを、単純な予測式に変換

2021年12月24日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

日立製作所は2021年12月24日、「説明可能なAI」の技術を強化したと発表した。内容が複雑なブラックボックス型のAIを、判断基準が明確なAI(単純な予測式)に変換する技術を新たに開発した。同技術の一部を、日立グループにおける製品出荷前の自動検査ラインに適用したところ、熟練者不足の解消や、検査速度の向上といった効果を確認したという。

 日立製作所は、「説明可能なAI」(Explainable AI:XAI)の技術を強化した。内容が複雑なブラックボックス型のAIを、判断基準が明確なAI(単純な予測式)に変換する技術を新たに開発した(図1)。同技術の一部を、日立グループにおける製品出荷前の自動検査ラインに適用したところ、熟練者不足の解消や、検査速度の向上といった効果を確認した。

図1:内容が複雑なブラックボックス型のAIを、判断基準が明確なAI(単純な予測式)に変換する技術を開発した(出典:日立製作所)図1:内容が複雑なブラックボックス型のAIを、判断基準が明確なAI(単純な予測式)に変換する技術を開発した(出典:日立製作所)
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 従来のブラックボックス型AIは、予測精度を高めるために、複雑な数式で構成している。判断基準が不明確であるため、未知のデータに対して意図しない予測結果を導く不安やリスクがある。一方、今回開発した技術を用いると、人が理解できる単純な予測式に変換することにより、明確な判断基準の下で予測結果を提示する。出力した予測式の調整も可能である。

 同社はこれまでも、説明可能なAIを活用したサービスを提供し、有用性を検証してきた(関連記事日立、「説明可能なAI」を活用した「AI導入・運用支援サービス」を開始、現場の納得感を獲得)。検証によると、想定できない予測結果をAIが出力する場合、ユーザーはAIを信頼できず、対策に多くの時間を取られてしまうことが分かった。こうした経緯から今回の技術を開発した。

 開発した新技術の流れを説明している。まずは、従来のXAI分析技術を使い、入力データに対し、要因(特徴量)が予測値に及ぼす影響の強さ(貢献度)を算出する。次に、特徴量が変化しても予測値への貢献度が一定である入力データの領域をクラスタリング技術によって抽出する。

 抽出した入力データ領域においては、特徴量は予測値に影響を与えない。このため、この領域で判断基準を単純化できることを期待して、AIを単純な予測式に変換する。このような処理をすべての入力データ領域で繰り返し、全領域を単純な予測式に変換する。

予測式は調整可、式を適用する領域の変更や、式の変更が可能

 得られた予測式を調整する機能も備える(図2)。入力データ領域を分割する際の境界値を、ユーザーの知識に合わせて調整する。例えば、「耐震基準が2000年に変更されたので、1998年ではなく2000年の前後で判断基準が替わるようにしたい」という調整が可能である。

図2:得られた予測式を調整する機能も備える。入力データ領域を分割する際の境界値を、ユーザーの知識に合わせて調整できるほか、より単純な形の式へと変形できる(出典:日立製作所)図2:得られた予測式を調整する機能も備える。入力データ領域を分割する際の境界値を、ユーザーの知識に合わせて調整できるほか、より単純な形の式へと変形できる(出典:日立製作所)
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 予測精度よりも予測式の単純さを優先する場合は、より単純な形の式を指定すればよい。例えば、「築年数×0.5」+「土地の傾き×5」+「木造なら+3」+「地域Aなら+2」という4つの変数が複雑だと考える場合は、影響が小さな最後の要素「地域Aなら+2」を削除して変数を3つにする、といった調整が効く。

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