矢野経済研究所は2022年12月7日、国内民間企業におけるIT投資に関する調査結果を発表した。IT投資額ベースによるIT市場規模の推計・予測と、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの意欲を尋ねた調査の結果・分析について、それぞれの概要を示している。IT投資額ベースのIT市場規模は前年度比4.5%増の13兆5500億円と推計。DXへの意欲はコロナ禍以前/以後に変化が見られる。
矢野経済研究所は、国内民間企業におけるIT投資の実態を調査した。IT投資額ベースによるIT市場規模の推計・予測と、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの意識調査の結果・分析について、それぞれの概要を示している。
国内民間企業における2021年度のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、IT投資額ベースでは、前年度比4.5%増の13兆5500億円と推計している。新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、テレワークに関するインフラへの投資が拡大したという(図1)。
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「テレワークに関するインフラ投資は、企業の規模を問わず緊急対応を迫られたものであり、市場に与えたインパクトも大きい。テレワークが難しい業種・業務においても、リモート対応を求められる機会が増え、ECの強化やAIを活用したコールセンター向け投資、デジタルマーケティング関連への投資などが拡大した。なお、2022年度もコロナ禍対策としての投資は一部継続する」(同社)
2022年度以降のIT市場規模について同社は、2022年度が前年度比4.0%増の14兆900億円、2023年度が同2.2%増の14兆4000億円、2024年度が同1.4%増の14兆6000億円と予測する。
「2022年度は、データを活用し、競争力や顧客エンゲージメントを高める取り組みが目立つ。また、電子帳簿保存法やインボイス制度に対応するための投資も見込まれる。新型コロナウイルス感染症流行の影響を大きく受けたサービス業においても、業績に回復の兆しが見られ、人手不足、デジタルマーケティングに関する投資が伸びている」(同社)
好調なIT投資を支える要素として、セキュリティ対策やBCP(事業継続計画)対応を挙げている。サイバー攻撃による被害が増加傾向にあることから、各規模・各業種で今後も投資が拡大していくと同社は予測する。
2023年度以降は、基幹システムやサーバーのリプレース、セキュリティ対応などのほか、データを活用した取り組みの必要性が高まると同社は見る。「データを活用した取り組みに関しては、人材不足が課題に挙がることも多く、ユーザー企業は今後、IT人材育成にも投資を行っていく」(同社)。リスキリングやリカレント教育が注目を集めているのもその表れだという。
●Next:コロナ禍の前後でDXに対する意欲はどのぐらい変わったのか?
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