[市場動向]

富士通、広域ネットワーク設備リプレース時の回線切替順序を量子着想技術で探索

設備運用コストを3割、技術者の移動コストを8割削減

2023年3月8日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

富士通は2023年3月8日、老朽化した広域ネットワーク設備の再構築に、量子着想技術「デジタルアニーラ」を適用し、有効性を確認したと発表した。一般的な最適化ソフトウェアを用いた場合と比べて、移行期間中の旧設備の運用コストを最大30%、技術者の移動コストを最大80%削減できた。富士通は同技術を、ネットワークのモダナイゼーションで先行する北米市場向けに提供する準備を進める。

 富士通は、老朽化した広域ネットワーク設備の再構築に、量子着想技術「デジタルアニーラ」を適用し、有効性を確認した(関連記事富士通、組み合わせ最適化を解くデジタルアニーラを8192ビットに拡張、オンプレミス設置も可能)。一般的な最適化ソフトウェアを用いた場合と比べて、移行期間中の旧設備の運用コストを最大30%、技術者の移動コストを最大80%削減した(図1)。富士通は同技術を、ネットワークのモダナイゼーションで先行する北米市場向けに提供する準備を進める。

図1:コスト削減の効果(出典:富士通)
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 同検証は、2021年4月から2023年2月に実施した。トロント大学のShahrokh Valaee教授のチームとの共同研究において、数十の設備と数百の回線が複雑に絡み合う複数の大規模ネットワークから組み合わせ最適化問題を導出し、デジタルアニーラを用いてコストを最小化する回線切り替えの順序を探索した(図2)。

図2:回線切り替え順序と設備運用コストの関係(出典:富士通)
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 国や地域に広がる広域ネットワークは、企業などの施設や敷地に設置した小規模なネットワークと異なり、移行計画の策定が難しい。富士通によると、膨大な回線と設備が複雑に絡み合うため、回線切り替え順序の組み合わせは、小規模なものでも10の150乗以上になる。これらの組み合わせから最適なものを実用的な時間内に手作業で導き出すことは不可能だったという。

 デジタルアニーラの特徴は、探索の対象となる変数を0か1で行列に配置した際に、それぞれの行と列に1を取る変数が1つであるというルール(2way-1hot制約)を持つ最適化問題に対して、探索しなければいけない変数の組み合わせの数を大幅に削減し、高速に解を探索できること。今回、データ表現形式を工夫することによって、2way-1hot制約を持つ最適化問題を導出した。これにより、デジタルアニーラの特徴を生かした探索が可能になった。

 「ネットワーク設備の更改では、移行作業期間の初期段階でより多くの旧設備を撤去でき、かつ技術者の移動コストを最小化できる回線切り替え順序を選ぶことが重要である。その順序によっては、多くの旧設備を維持し続けることになり、占有スペースや電気、空調、メンテナンスなどの運用コストが発生する。また、作業には技術者を派遣する必要があり、切り替えの順序によっては遠方施設へ何度も訪問が必要になるなど、移動コストが発生する」(富士通)

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