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中国電力、水力発電所の運転計画をAIで策定、2023年度に2つのダムで実運用

2021~2022年の試運用で精度を確認済み

2023年5月31日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

中国電力とエクサウィザーズは2023年5月31日、AIを用いた水力発電所の運転計画システムを2023年度に本稼働させると発表した。2021年度から2つのダムで試運用を実施しており、実運用しても問題のない精度であることを確認済み。まずは、試運用を実施した2つのダムにおいて実運用に移行する。操作性の改善などを経て、他のダムへの導入も進めていく。

 中国電力(本社:広島県広島市)は、AIを用いた水力発電所の運転計画システムを、2023年度に本稼働させる(図1)。まずは、試運用を実施済みの2つのダムを実運用に移行する。操作性の改善などを経て、他のダムへの導入も進めていく。

図1:中国電力とエクサウィザーズが開発した運転計画システムにおけるAIモデルの概要(出典:エクサウィザーズ)
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 試運用は、2021年~2022年度に、中国電力の山口県にある佐々並川ダム(佐々並川発電所)と、島根県にある周布川ダム(周布川第一発電所)で実施。この結果、実際の発電所の運用に活用しても問題がない精度であること、従来手法と比べて発電電力量が増え、需要が大きい時間帯に集中して発電できることを確認した。

 運転計画の対象は、川の水をダムに貯めてから必要な時に利用して発電する貯水池式水力発電所。雪どけ水、梅雨、台風時に貯めた水を、渇水時など、主に電力需要の多い時間帯に利用する仕組み。運転計画では、週間レンジにおける貯留水の発電への配分計画や、翌日の1日分の発電計画を策定する。

 従来は、AIを活用しない従来的なモデルを利用して、ダムへの流入量を予測していた。このうえで、熟練者による経験を基に、複数の発電パターンから選択し、計画を策定していた。今回、ディープラーニング(深層学習)などを組み合わせ、AIモデルを新規に開発した。これにより、ダム流入量の予測精度が高まり、より精緻な運転計画を策定できるようになる。

 以下の3つのステップで運転計画を作成する。

  1. ダム流域における過去の降水量とダムへの流入量を学習させたうえで、ダム流域の詳細な気象予測を入力し、10日間程度のダム流入量を予測する(図2
  2. 予測したダム流入量データと、電力市場価格の予測を組み合わせ、ダムの貯留水を日ごとの発電使用水量へと配分する(図3
  3. 配分した翌日の発電使用水量と、翌日の電力市場価格の予測から、翌日の需要に応じた24時間の発電計画(30分ごとの発電出力)を策定する(図4
図2:長期間の降水量予測を用いてダム流入量を予測する方法の概要(出典:中国電力)
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図3:発電に使う水を週間レンジで配分する方法の概要(出典:中国電力)
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図4:翌日の発電計画を策定する方法の概要(出典:中国電力)
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