[事例ニュース]
NEC、鉄道輸送の復旧ダイヤを短時間で作成するAIをデジタルツインで検証、小田急電鉄のデータで有効性を確認
2023年6月22日(木)IT Leaders編集部
NECは2023年6月21日、事故や自然災害によって鉄道輸送に障害が発生している時に短時間で復旧ダイヤを作成するAIシステムのプロトタイプを構築し、効果を検証したと発表した。小田急小田原線を対象にデジタルツイン上で検証したところ、過去の輸送障害事例の任意のケースにおいて、列車の駅間停車を回避する運転整理ダイヤを出力できた。
(2023/06/23 14:45 編集部よりお詫びと訂正)
掲載開始時、タイトル、リード文、本文1段落において、AIを検証した主語が小田急電鉄となっていましたが、NECの誤りです。検証の主体はNECであり、小田急電鉄は検証用のデータやアドバイスをNECに提供して検証に協力しただけです。お詫びして訂正いたします。
NECは、事故や自然災害によって鉄道輸送に障害が発生している時に短時間で復旧ダイヤを作成するAIシステムを検証した(図1)。小田急小田原線を対象に検証したところ、過去の輸送障害事例の任意のケースにおいて、列車の駅間停車を回避する運転整理ダイヤを出力できた。NECが構築した、復旧ダイヤを作成するAIシステムのプロトタイプを使って検証した。
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構築したシステムは、強化学習のAIを活用し、現実的な時間で大規模最適化問題の解を得る。鉄道運行をデジタル空間に再現したデジタルツインを用い、作成したダイヤの実用性を検証する。実際の輸送障害のケースだけでなく、未経験のケースをデジタルツイン上で発生させることで、AIが試行錯誤しながら対処方法を学習する。
事前に対処方法を学習することで、輸送障害時に数分でダイヤを作成可能である(図2)。さらに、輸送障害時にいったん全列車を停止させるなどのルールを順守するAIを協調的に動作させることで、守るべきルールと効率性を両立させたダイヤを作れる。
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これに対して従来は、混合整数計画法などを活用した、組み合わせ最適化AIによるダイヤ作成が試みられてきた。しかし、大規模かつ複雑な鉄道路線で利用すると、膨大な計算時間が必要になり、迅速な復旧が求められる輸送障害時の運用はできなかった。
「鉄道の運行形態の複雑さが増し、線路内立ち入りや動物との衝突、予測できない自然災害による遅延・運行可能区間の制限といった輸送障害の件数が増えている中、鉄道運行ダイヤ作成業務の省力化が求められている」という。
NECは今後、復旧ダイヤの作成だけでなく、通常ダイヤの作成や乗務員計画への拡張などを通し、鉄道運行にAIを展開する可能性について検討を進める。また、今回構築したAI技術については、航空や物流など各種業界での応用も検討していく。