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[調査・レポート]

データドリブン経営を主導する「先駆的CDO」が持つ4つの視点

IBM グローバルCDO(Chief Data Officer)調査より

2023年10月17日(火)指田 昌夫(フリーランスライター)

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の旗手として、「CDO:Chief Digital Officer」というポジションがよく知られるようになった。一方で、データの高度活用を牽引する「CDO:Chief Data Officer」もまた、攻めのITと守りのITの両面で重責を担う。本稿では、米IBMによるChief Data Officerのグローバル調査の結果から、企業のデータ活用やデータドリブン経営への転換といったテーマへの取り組みの実態を確認していく。

調査から見えた「先駆的CDO」の存在

 CDO(Chief Data Officer)の役割が変容している。IBMはグローバルCDO調査の結果からデータドリブン経営を牽引する「先駆的CDOおよびデータ価値創造型CDO」(以下、先駆的CDO)を抽出し、彼らと他のCDO、日本企業のCDOの違いについて考察している。同社は2003年以降、グローバルで6万人超の上級管理職への調査を行ってきたが、CDO調査は今回が初となる。

 その説明を、日本IBMのIBMコンサルティング事業本部 データ&テクノロジー事業部 シニア・パートナー 事業部長を務める松瀬圭介氏と、同アソシエイト・パートナーの鈴木至氏の2名が行った。

 IBMがグローバルCDO調査を実施したのは2022年第4四半期。北米、欧州、アジアなど30カ国以上、29業種/3000人のCDOを対象にしている。日本の対象者については、呼称がCDOでない場合も含め、企業内でデータ品質に責任を持つ経営幹部を中心とした180人に調査している。

写真1:日本IBM IBMコンサルティング事業本部 データ&テクノロジー事業部 シニア・パートナー 事業部長の松瀬圭介氏

 冒頭、松瀬氏(写真1)は、「CDOに相当する役職が登場してから20年経つが、まだ明確な定義はない。そのため、日本とグローバルではCDOの役割にもズレが生じている」と述べた。同社の調査では、データセキュリティに責任を負うCDOはグローバルで52%なのに対し、日本は半分の26%、また、組織のデータが安全に保護されていると考えるCDOは、グローバルが61%に対して日本は56%と低くなっている(図1)。

図1:CDOの認識(出典:日本IBM)
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 こうした海外との差について松瀬氏は、「日本のCDOは企業の成長や経営計画にデータを活用する攻めに重点を置いている。セキュリティやデータ保護についての守りに対しては、残念ながら注力の度合いが低い」と指摘する。

 次に松瀬氏は、IBMが“Data Value Creator”と呼ぶ、先駆的CDOに見られる4つの特徴を挙げた。これらはData Value Creatorの行動原理を端的に示すものだという。

データから価値創造に至るロードマップを明確にする
データ投資によってビジネスの成長ペースを加速する(アジリティを引き出す)
データをビジネスモデルイノベーションの中核として位置づける
④(他社が持つデータを生かした)エコシステムを構築し、パートナーとの連携を最大化する

 全調査対象のうち先駆的CDOが占める割合はグローバルで8%、日本で11%となった。上記した4つの特徴への取り組みを100%とした場合、その他の企業の取り組み度合いの平均値は60%~80%に収まっている。日本企業は特に①と③についてギャップが大きいが、グローバルと日本の平均にそれほど大きな違いはない(図2)。

図2:先駆的CDOの特徴と取り組みの度合い(出典:日本IBM)
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まず着手すべき「データリテラシー向上」と「データ保護」

 続いて鈴木氏(写真2)が、「先駆的CDOの4つの特徴から得られる示唆」についてそれぞれ説明した。

写真2:日本IBM IBMコンサルティング事業本部 データ&テクノロジー事業部 アソシエイト・パートナーの鈴木至氏

①データから価値創造に至るロードマップを明確にする

 すぐれたCDOは、データを活用するための優先順位やさまざまな選択を、テクノロジーとビジネスの両面で最適になるようにしていることが調査から明らかになった。鈴木氏は、その実現のために重要な2つのポイントとしてデータリテラシーとデータ保護を挙げて説明した。

 まず、先駆的CDOは組織内のデータリテラシーが不可欠だと認識していること。「経営層から現場の従業員まで、企業全体にデータを活用するリテラシーを高めることが必要で、そのためにCDOは、研修やリスキリング、人材獲得などさまざまな施策を実施している」(鈴木氏)。取り組みの違いを日本とグローバルで比較すると、外部人材の獲得については日本が積極的であるものの、研修やリスキリングなど従業員の育成面で日本は遅れている(図3)。

図3:組織がデータ・リテラシーを向上させるために⾏っている主要アクション(出典:日本IBM)
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 もう1つのデータ保護は、「社内外の活動で信頼関係を得るための条件」と鈴木氏は話す。先駆的CDOは、そうでないCDOよりもデータ保護、サイバーセキュリティに注力している。日本のCDOはデータ倫理や組織の透明性確保が課題であることがわかった。「生成AIなどを活用し、先駆的CDOに追いついていく必要がある」(鈴木氏)

②データ投資によってビジネスの成長ペースを加速する

 先駆的CDOは、データマネジメント戦略をDXのロードマップと連携させている割合が高い(図4)。「特にAIの活用が他のCDOよりも活発だ」と鈴木氏は指摘する。グローバルでは政府機関、通信、金融機関などを中心にAIへの投資が加速しており、ビジネス変革の中核にデータ戦略を組み込んでいることが明らかになっている。

図4:⾃社のデータマネジメント戦略をDXに明確に連携させている割合(出典:日本IBM)
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 「日本ではこれまでDXのD=デジタルの導入に力を入れてきたが、今後はいかにX=変革を実現していくかが重要になる。AIの活用は、まさに変革によるビジネス成長のカギであり、原動力になる」(鈴木氏)

●Next:テクノロジーの見極めと組み合わせに長ける先駆的CDO

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